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Marunouchi Law Lab

スマホソフトウェア競争促進法の成立

2024/09/30

スマホソフトウェア競争促進法の成立

Marunouchi Law Lab

 本年6月12日に、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る 競争の促進に関する法律」(スマホソフトウェア競争促進法)が参議院本会議で可決され、法律として成立しました。
 今回の丸の内Lawラボでは、同法の概要をご紹介させていただきたいと思います。

1 スマホソフトウェア競争促進法成立の背景

 公正取引委員会作成の法律概要資料には、同法の背景・趣旨について、以下のとおりの記載があります。

  •  スマートフォンが急速に普及し、国民生活及び経済活動の基盤となる中で、スマートフォンの利用に特に必要な特定ソフトウェア(モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン。これらを総称して「特定ソフトウェア」という。)の提供等を行う事業者は、特定少数の有力な事業者による寡占状態である。
  •  特定ソフトウェアに係る市場においては、当該事業者の競争制限的な行為によって、公正かつ自由な競争が妨げられている。一方、これらの市場については、新規参入等の市場機能による自発的是正が困難であり、また、独占禁止法による個別事案に即した対応では立証活動に著しく長い時間を要するとの課題があることから、公正かつ自由な競争を回復することが困難である。
  •  こうした状況を踏まえ、スマートフォンの特定ソフトウェアについて、セキュリティの確保等を図りつつ、競争を通じて、多様な主体によるイノベーションが活性化し、消費者がそれによって生まれる多様なサービスを選択できその恩恵を享受できるよう、競争環境を整備する必要がある。

  • ※ 太字下線部は筆者追記

 
 以上のとおり、スマホソフトウェア競争促進法は、スマートフォンに搭載される、モバイルOSやアプリストア、ブラウザ等の特定ソフトウェアが、現在、一定の有力企業の寡占状態にあることから、それを是正・改善することを目的とした法律です。

2 スマホソフトウェア競争促進法の主な内容

スマホソフトウェア競争促進法の主な規定内容は以下のとおりです。

 ア 規制対象事業者の指定
 公正取引委員会は、特定ソフトウェアの提供等を行う事業者のうち、特定ソフトウェアの種類ごとに政令で定める一定規模以上の事業を行う者を規制対象事業者として指定されます(指定を受けた事業者を「指定事業者」といいます。)。

 イ 禁止事項及び遵守事項の整備
 特定ソフトウェアを巡る競争上の課題に対応するため、指定事業者に対して、一定の行為の禁止(禁止事項)や、一定の措置を講ずる義務付け(遵守事項)が定められることになります。

     【禁止事項や遵守事項の概要】

(出典:公正取引委員会・法律概要資料3頁)


 例えば、上記の「アプリストア間の競争制限」に関してみると、現在一定の事業者(指定事業者)において、ユーザーが、自身が運営するアプリストア以外からアプリが入手できないような仕様としていることがあります。もっとも、スマホソフトウェア競争促進法により、今後、指定事業者は、自身が運営する以外のアプリストアからユーザーがアプリをダウンロードすることを原則として妨げてはならないことになります。他方で、セキュリティ上の問題等がある場合等の一定の場合には、例外的に指定事業者において、アプリストア間の競争制限を行うことが許容される場合もあります。
 (このように、スマホソフトウェア競争促進法では、指定事業者の禁止事項について、セキュリティ等の観点から、一定の例外が設けられている場合もあります。今後、例外的取り扱いの範囲の明確化等のため、公正取引委員会にて新たなガイドラインが作成される予定とのことです。)
 
 ウ 規制の実効性確保のための措置
 指定事業者による規制の遵守状況に関する報告、関係事業者による情報提供、関係行政機関との連携、公正取引委員会の調査権限や違反を是正するための命令、課徴金納付命令等の規定が設けられています。

 エ 施行期日
 施工日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています(ただし、一部の規定を除く。)。

3 まとめ

 スマホソフトウェア競争促進法の成立により、新たな事業者が、特定ソフトウェア分野に新規参入し、新たな市場競争が生まれることになるかもしれません。他方で、新たな事業者が参入することによって、セキュリティ上の問題が生じてしまうのではないかといった懸念や課題もあります。
 情報・テクノロジー法チームでは、引き続き、同法に関するガイドラインの制定や市場の動きなどにも着目して参りたいと思います。

(文責:尾臺知弘)

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