BCPやリスクマネジメントに関わるコンサルティングを事業内容としているニュートンコンサルティングでは、同社のホームページに「能登半島地震に学ぶ、BCP活動を進化させるヒント」(以下、論考といいます。)ということで2024年2月7日に掲載し、今も見ることができます。
能登半島地震に学ぶ、BCP活動を進化させるヒント|リスク管理Navi [ニュートン・ボイス] (newton-consulting.co.jp)
同社の社長の副島一也さんとはずいぶん前からの知り合いで、事務所にも来ていただきました。「なぜ弁護士の中野さんがBCPに一生懸命なのですか。儲かるのですか?」と私に質問をされてきたことが鮮明に思い出されます。
もちろん、そんなに儲かりません。(笑)
掲載されている論考では、能登半島地震の5つのポイントとして
1.ハザードマップが警告していない場所でも被害が発生した
2.新耐震基準導入後の建物でも倒壊した建物が少なくない
3.緊急輸送道路が寸断されインフラ復旧に大きな支障をもたらした
4.良くも悪くも特別なタイミング(1月1日)で発生した
5.過去の震災の学びが役に立った場面も大いに見られた
を挙げ、次の5つの実践にまとめられるとしています。
(1)拠点被災について再リスクアセスメントの要否を検討すべし
(2)従来型BCPからオールハザードBCP化を検討すべし
(3)被災シナリオの見直しを検討すべし
(4)過去からの学びにも改めて向き合うべし
(5)当事者による訓練・演習をとにかくやるべし
どれも、確かにそのとおり!というものですし、合点が行くものと思います。この中で、特に私が強く共感したのは、
(3)被災シナリオの見直しを検討すべし
でした。論考では、そもそも災害には「想定外はつきもの」であるからといって、「想定することを諦めて良い」という意味ではないとしています。当然のことですが、想定されていることと想定されていないこととどちらが対処しやすいかと言えば、想定されていることの方が対処しやすいのです。だから企業BCPの策定にあたっては、被災想定に基づき行動計画書の策定をしていることがほとんどでしょう。私は、それで良いかと思っていましたが、今回の能登半島地震のように緊急輸送道路が機能せず復旧に想定以上の時間を要する場面もあろうかと思います。この論考では「自社のBCP策定の前提条件となる被災想定が軽すぎないかどうかについての再確認が必要」としています。想定をする範囲を「自社で対応できる範囲」に意識的にか無意識的にか分かりませんがいずれにせよ限定してしまっている、ということでしょう。2014年12月に亡くなった元東京都総務局総合防災部防災担当課長の齋藤實さんは「想定外を想定する危機管理」(アイフィス2011年10月)という著書を出版されましたが、生前、齋藤さんは「『想定外』と思うと、その瞬間から思考が停止する。だから「想定外」と思われること、さらに「自分たちではこれ以上の被害状況には対応できない」と思われることでも「どのように対応するかをしっかり考えなければならない。考えれば、答えは出てくるんだ」と言っていました。
また、今回の能登半島地震でも再認識できたように、災害は「よりによってこんなときに」という最悪のタイミングで起こりうるものです。「1月1日のめでたいタイミングでの被災はさすがにないだろう」などと思考停止をしてしまってはいけないですね。企業にとって「この日に災害があったら困るな~」という日をイメージして検討・策定に取り組むべきでしょう。
では具体的にどうすればよいか、ということの答えは、もちろん、簡単なものではないでしょうが、繰り返しのシミュレーションや訓練が役立つと思います。リアリティのある訓練で想定外を想定内にする、もちろん、想定外が無くなることは無いけれど、想定している範囲を広げると対処が楽になり、かつ、適切にもなる、という関係では、必要な取り組みですし、効率の良いBCP、精度の高いBCPになると思います。
そこで提案!まずは原点回帰。訓練・演習をやりましょう。