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令和5年10月1日から施行!ステマ規制とは?

2023/10/31

令和5年10月1日から施行!ステマ規制とは?

●登場人物
軽照美(かるてるみ)   :新興化粧品メーカー(軽照メイク社)の社⾧
高鳥高子(こうとりたかこ):同社の顧問弁護士


~美容業界が中心となって開催している●▲法務研究会後~

軽照美 :高鳥さん。この前は、競品社との取引基本契約書のレビューありがとうございました。短い納期だったのに、迅速に対応いただいて本当に助かりました。

高鳥高子:軽さん。いえいえ、こちらこそいつもお世話になっております。

軽照美 :ところで、立ち話で申し訳ないんですけど、最近、ステルスマーケティング規制って話題じゃないですか。うちも自社製品の宣伝のためにいわゆるインフルエンサーを使うことを検討していたんですけど、そういう規制があるって聞いて、一度インフルエンサーの起用をストップしているんです。

高鳥高子:2023年10月1日から施行となったステルスマーケティング規制(ステマ規制)のことですね。

軽照美 :それです。そもそもどんな規制なのかもよく分かってないのですが。

高鳥高子:今、お時間ありますか?

軽照美 :大丈夫です。

高鳥高子:そしたら、口頭になっちゃいますけど、概要をご説明しますね。

軽照美 :ぜひ、お願いします。

高鳥高子:ステマ規制の施行以前から、景品表示法上の不当表示として①優良誤認表示、②有利誤認表示という規制がありました。①の優良誤認表示とは、実際の商品・サービスよりも優良なものと消費者に誤認させる表示等がこれにあたり、例えば、効果に対するエビデンスがないのにスキンケア商品について「1ヶ月でしわが消える!!」といった表示を行うような場合が該当します。②の有利誤認表示とは、実際の商品・サービスよりも有利な価格で販売していると消費者に誤認させる表示等がこれにあたり、例えば、スキンケア商品について実際の販売価格は4000円なのに、実態のない参考価格として8000円と表示し、あたかも50%オフの商品であるかの表示をするような場合が該当します。 他方、今回新たに規制されることとなったステルスマーケティングとは、広告であることを隠す広告と定義されており、言い換えれば、消費者が事業者による表示であると判別することが難しい表示ということもできます。典型的には以下のような例が考えられますね。
 

 インフルエンサー個人が自らの評価を述べたように見えるものが、実際は事業者の依頼による広告であった。
 商品・サービスに係る「いいね」ボタンを、その商品・サービスを提供している事業者の従業員が押していた。

消費者は、事業者による表示であると知っていれば、誇張や誇大が含まれる可能性があることを考えて商品選択をしますが、ステルスマーケティングのように第三者による表示に見えるものについては、誇張や誇大が含まれる可能性を考えずに商品選択をしてしまうため、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選べなくなる可能性が高く、かねてから問題があると考えられていました。 しかし、ステルスマーケティングは、優良誤認表示や有利誤認表示には当たらないものも多く、これまでの景品表示法では規制ができないものが多くありました。

軽照美 :そういう広告が何となく良くないっていうのは感覚としては分かるんですけど、これまでの規制だと対象に入らなかったことが多かったのですね。

高鳥高子:そうなんです。そこで新たに消費者庁が一定のステルスマーケティングについて、景表法の規制の対象にすることとしたのが、今回のステマ規制の経緯となります。

軽照美 :ちなみに、そのステマ規制に違反するような広告だった場合、どういった制裁を受けることになるんですか?

高鳥高子:消費者庁は、景表法上の規制対象となるようなステルスマーケティングがなされている疑いがある場合、まず、事業者への調査を行います。
そして、調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、事業者に対し、「措置命令」を行います。具体的には、ステルスマーケティングにより消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを事業者に命令します。
また、調査の結果、違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合には、消費者庁より行政指導の措置が採られることもあるので注意が必要です。

軽照美 :措置命令なんて出されたら会社の信用にも関わってくるし、本当に気をつけないといけないですね。でも結構、巷にそういう広告ってあふれているし、どういう場合に違法になるのかがよく分からないです。

高鳥高子:そういった懸念を回避するためにも、消費者庁は、どのような表示が規制対象となるステルスマーケティングであるかについて2023年4月28日付けで運用基準(ステマ運用基準)を公表し、その解釈の指針を示しています。このステマ運用基準によれば、以下のⅠ、Ⅱの要件をいずれをも充足すると、景表法違反ということになります。

【要件Ⅰ】事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示(「事業者の表示」)であること
【要件Ⅱ】 一般消費者が「事業者の表示」であることを判別することが困難である(「判別困難性」)と認められるもの

軽照美 :「事業者の表示」、「判別困難性」ですか。やはり、抽象的で難しいですね。

高鳥高子:その点についてもステマ運用基準で消費者庁は一定程度明らかにしてくれていますよ。要件Ⅰの事業者の表示についていえば、…

軽照美 :すみません。話の途中で申し訳ないのですが、この後、うちの製品の新規開発会議が入っているのをうっかり忘れていました。具体的な内容がとっても気になるのですが、また、次回、ご説明いただけないですか。

高鳥高子:もちろんですよ。あと、11月28日(火)にうちの事務所と協力関係にある丸の内総合法律事務所の曽根弁護士と眞木弁護士がステマ規制についてセミナーを予定しているみたいなので、こちらにご参加いただくというのもいいかもしれません。

軽照美 :すごく興味があります。

高鳥高子:今、お話ししたような全体的な制度の概要はもちろん、オフラインの参加者向けに具体的な事例等を踏まえたディスカッションも予定しているみたいです。他の景表法改正についても言及してくれるみたいで、とても良いセミナーなのではないかと思います。セミナー後には、丸の内総合法律事務所に最近できた素敵なラウンジで懇親会もあるみたいです。

軽照美 :私は顧問先ではないのですが、参加してもよろしいでしょうか。

高鳥高子:そこは問題ないと曽根弁護士から聞いてます。あ、ステルスマーケティングにならないように曽根弁護士に宣伝をお願いされたこともお伝えしておきますね。
HPに具体的な申込方法は記載してあるみたいですので、そちらをご覧になってみて下さい。

軽照美 :ありがとうございます(笑)。HPから申し込んでみます。

(文責:経済法研究チーム)

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