2020年4月7日の緊急事態宣言の発令から、全国で宣言が解除された5月25日までの間、宣言の対象地域においては、テレワークが不可能なエッセンシャルワーカーを除き、多くの企業でテレワークまたは出勤者数の制限が行われており、日本全国で同様の対応が実施されていたものと思います。ただ、事業者としては、この時期にどう対応するべきであったか、これまで経験したことがない状況に遭遇したということで、非常に悩ましかったのではないでしょうか。そこで、特にこの期間やその前後に着目して、各企業の対応を確認していきたいと思います。
まず、中国・武漢で感染者が確認された時期(海外発生期)から日本での感染が拡大する前(国内発生早期)までの時期における対応を確認します。
今回の新型コロナウイルスの場合、最初に感染者が確認された中国の武漢が、多数の自動車工場を擁する地域であったことから、日本では自動車メーカー各社において「拠点人員への対応」や「出張等の中止」が必要となる状況でした。また、自動車メーカー以外でも現地に拠点を持つ金融機関においては、2020年1月下旬、中国の春節による休暇に合わせ、武漢での営業を休止しました。また現地社員については、最低限必要な人員を除き、日本へ帰国するよう手配がなされています。現地拠点で営業が再開された時期は概ね2020年3~4月であり、その間、営業停止となったものです。
一方で、中国の武漢に拠点を持たないものの感染の発生地域への出張等がある企業についてはどのように対応したのでしょうか。出張業務を必要とする事業者は、感染の発生地域への出張等がある場合、2020年1月下旬から渡航禁止措置を実施していることが多いようです。また金融機関では、全国展開を行っていない地域金融機関においても中国への渡航禁止等の措置が実施されており、他業種より早い段階での対応が特徴的です。
この休業=業務停止は事業継続の観点からは大規模地震のBCPなどとの関係では非常に特徴的な取り組みとなります。

図は内閣府の「事業継続ガイドライン(第三版)」3ページの注8で掲載されているものですが、突発的に被害が発生するリスク(地震、水害、テロなど)と異なり、「感染症に係るもののイメージ図」と説明されています。ここで着目すべきは、図で「計画的停止」とされている部分です。今般の休業に該当するところですが、私は「積極的な意味のある休業=業務停止」と説明しています。つまり、大規模災害などの場合の事業継続といえば可能な限り業務は維持し、または可及的速やかに業務再開する、ということですが、感染症リスクに対しては「休業」が有益な対策であるという点です。積極的に休業することが感染拡大を抑制し、結果として事業継続には有意な意味があるのです。この考え方は、経営判断において非常に重要であり、また判断に悩むところでもあると思います。自社だけが休業しても感染拡大を抑止することにはならないのではないか、という反対論も社内では湧き上がるでしょうし、逆に世論に反して営業継続をすることへの批判的意見や、同業他社は営業継続している、同社との競争で劣勢となってしまうなどという意見も出てくるでしょう。そうなると、事業継続としてどのように判断することが良いのか、最大の悩みどころとなります。
この点の「悩み」については、このコロナ禍で経営者の皆さんが苦労をしながら、あるべき「正解」を求めて、対応を決めて前に進んだことと思います。ダメなのは、判断をしないこと。なんとなく時間が過ぎ、なんとなくダメージを受けつつ、なんとなく過ぎてしまったというのであれば、何の教訓も生まれません。善管注意義務とも言えます。失敗したことも重要な教訓です。それは判断=方針決定=意思決定をすることで会社としての議論、思考過程が後々検証対象となりうるからです。・・・私としても「正解はこれです。」というものは持ち合わせていません。各経営者は事業内容に応じて、在宅勤務などを活用して事業継続と計画停止とをバランスを勘案しながら実施されたのであり、「経営判断」としてはそれで良いと思います。繰り返し申し上げて恐縮ですが、一番ダメなのは何も判断せず、なんとなく時間が解決してくれた(なんとなくダメージを受けてしまった)、という状況です。
皆さんの会社はいかがでしょうか。