ニュースレター登録

Legal Contents 法務コンテンツ

  • TOP
  • 法務コンテンツ
  • 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(案)の公表

松井 秀樹井上 能裕曽根 裕貴若林 功加藤 将平山田 雅洋

特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(案)の公表

2022/11/30

特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(案)の公表

●登場人物
軽照男(かるてるお):厳しい業績に悩む中堅企業の社長
高鳥雄三(こうとりゆうぞう):同社の法務部長


軽照男    :このまえウチの大学生の息子が、我が社の名前をインターネットで検索したらしいんだが、地図と一緒に口コミとして我が社へのクレームが書かれてたと言ってたぞ。なんとかならんのかのう。

高鳥雄三:その件ならサイト運営者に削除申請しておきましたよ。微妙な内容なので通るかは分かりませんが(ってこれ先月報告したけどなあ…)。検索・地図サービスに限らず、インターネット上の色々なサービスが普及して、生活は本当に便利になりましたが、新たな課題も指摘されているところですよね。我が社もECサイトでの売上げが年々増えてきてありがたい一方で、対応が必要なことも出てきてますし。

軽照男    :ネットで売れていーっしっし、と笑ってばかりもいられんということかのう。そういえば数週間前に、プラットフォームに経産省がどうこうと新聞に出ていたけど、あれ、ウチにも何か関係あるのかいな?

高鳥雄三:透明化法【1】9条2項に基づく、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての経済産業大臣による評価について、経産省が評価の「案」を公表し、意見募集している件【2】のことですね。

軽照男    :そもそも透明化法ってなんじゃらほい?どう、めいかくに説明してくれんか?

高鳥雄三:(ムリヤリすぎる…)はい。透明化法は、デジタルプラットフォームと取引している事業者等から取引上の懸念の声が指摘されていることを受け、2020年5月に成立した法律で、昨年4月から本格運用が開始されています。1条の目的規定には「…特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上を図り、もって特定デジタルプラットフォームに関する公正かつ自由な競争の促進を通じて、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的」とありますし、一定の場合に公正取引委員会に適当な措置をとることを求めることができる旨の規定(13条)もあって、「独占禁止法の補完法」と言われてますよ。

軽照男    :背景や目的から説明されると、こう、せいかく上、眠くなっちゃうんだよなあ。まあとにかく経済法に関係があるっちゅうことか。で、肝心の中身はどうなっとるんじゃ?

高鳥雄三:指定を受けたプラットフォーム運営者のみが対象となるのですが、当該運営者には、
(1) 事業者との取引条件の開示や、取引条件を変更したり契約を解除したりする際の事前予告などを義務づける開示義務(5条)
(2) 苦情・紛争処理等のための自主的な手続・体制を整備する義務(7条)
(3) 措置の実施状況等の報告書(毎年度)の提出義務(9条)
等が課されるようです。

軽照男    :ふむ。確かに、取引ルールが変わる場合には、理由の説明や予告もなくぷらっと変えられたんじゃ困ることがありそうじゃし、何か問題があったときに運営者と円滑にコミュニケーションできることは重要じゃな。

高鳥雄三:(3)で提出された報告書を受けて、経済産業大臣が評価を行うことになっていて(同条2項)、今回公表されたものはその評価の「案」というわけです。

軽照男    :ほう、ではまだ確定した評価じゃないのか。なぜまたそんなことを?

高鳥雄三:透明化法では、経産大臣が評価を行うときに、あらかじめ、利用者・利用者団体、学識経験者等の意見を聴くことができるとされていて(同条4項)、これまで経産省は「デジタルプラットフォームの透明性・公正性に関するモニタリング会合」を設置し、有識者等の意見を聞いてきました。評価案は同会合での意見も踏まえて作成されたそうですが、「広く国民の皆様から御意見を頂戴すべく」案の段階で公表して意見募集しているようですよ。ちなみに、あまり報道されていませんが、評価案と一緒に公表された別添資料に、透明化法に違反する可能性があった個別事案について、経産省がプラットフォーム提供者に指導を行ったことなども記載されています。

軽照男    :ほほう。そうすると、さっきの検索サイトや地図サービスでの口コミについても、仮にこちらが削除申請してもまともにとりあってくれず、説明も全然してくれんかったら「苦情紛争の受付処理体制がなっとらん」とかなんとか経産省からプラットフォームに言ってくれるかもしれん、っちゅうことかいな?

高鳥雄三:うーん、インターネット上の検索サービスや地図サービス分野については現在のところ対象として指定されていないので、どうでしょうかね。ちなみに現在指定されている分野と事業者は以下の表のとおりです。

事業区分指定事業者(参考)対象PF
総合物販オンラインモールアマゾンジャパン合同会社Amazon.co.jp
楽天グループ株式会社楽天市場
ヤフー株式会社Yahoo!ショッピング
アプリストアApple Inc.及びiTunes株式会社App Store
Google LLCGoogle Playストア
デジタル広告メディア一体型Google LLC広告主向け広告配信役務である「Google広告」、「Display&Video360」等を通じて「Google検索」又は「YouTube」に広告を表示する事業
Meta Platform, Inc.広告主向け広告配信役務である「Facebook広告」を通じて「Facebook(Messenger含む)」又は「Instagram」に広告を表示する事業
ヤフー株式会社広告主向け広告配信役務である「Yahoo!広告」を通じて「Yahoo!JAPAN(Yahoo!検索含む)」に広告を表示する事業
仲介型Google LLC広告主向け広告配信役務である「Google広告」、「Display&Video360」等を通じて、「AdMob」、「Adsense」等により、媒体主の広告枠に広告を表示する事業

軽照男    :我が社が利用しているECプラットフォームや広告サービスも入っているじゃないか。知らんかったのう。

高鳥雄三:お時間あるようでしたらもっと詳細に、あと海外の規制・訴訟の動向についても説明しましょうか?

軽照男    :ワシはそうしてもらってもいいんじゃが、読者の皆さんにご迷惑がかかってこのメルマガの「評価」にかかわりそうじゃからやめとくわい。

(文責:経済法研究チーム)


【1】 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(令和2年法律第38号)
【2】 「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(案)への御意見を募集します。」
(経済産業省HP。URL:https://www.meti.go.jp/press/2022/11/20221111007/20221111007.html

主な研究分野

Legal Conents法務コンテンツ