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中野 明安

2024年を振り返る災害とBCP

2024/12/26

2024年を振り返る災害とBCP

 2024年も残すところわずかとなり、様々な出来事が私たちの生活に影響を与えました。パリオリンピックでの日本選手の活躍や、アメリカ野球界での大谷選手の大活躍など希望を感じさせた一年でもありましたが、同時に元旦の能登半島地震や熾烈な自然災害が印象的でした。

 特に能登半島地震は、関西の経済活動に及ぼす影響が大きかったと考えます。震災直後には合計116億円もの経済損失となるとの試算も公表されました(りそな総合研究所)。また、帝国データバンクによると、石川、富山両県の13市町からなる能登地方に本社を置く企業は2024年11月時点で4075社あり、売上高の合計は1兆3018億円に達するとのことです。ここが大きな打撃を受けるということですから、国家的な復旧支援が必要であるとして、北陸の復旧に関し、「まずは、交通網などのライフラインや食料、水、薬品などの物資の確保が必要だ」、「次の段階として、インフラの再構築や住む場所の確保、復旧後の都市計画や耐震・津波対策などを進める」として、国による支援の重要性が強く指摘されていました。

 ところで、能登半島地震の「災害関連死」をめぐり、朝日新聞では石川、富山、新潟3県の被災14市町にアンケート調査をしました。その結果、発災から3カ月以内の死亡が160人に上り、全体の約9割を占めたと発表されました。能登半島地震の関連死は12月17日現在247人で、直接死(228人)を上回っています。死亡時期は発災から1週間以内が30人、1週間後から1カ月以内が55人で、発災から1カ月以内の合計は85人に上り、全体の半数近くを占めています。発災2カ月以内は計128人で全体の70%を、発災3カ月以内は計160人で87%を占めた。被災直後に被るストレスや苦労が甚大であるかが想像されます。

 これら能登半島地震の状況を認識し、災害時に福祉的な支援にかかる費用を国が負担できるよう、政府は来年の通常国会で災害救助法を改正する方向で調整をしています。避難所以外で過ごす人にどのような支援が必要かいち早く把握し、災害関連死の防止につなげたい考えです。能登半島地震で被災した自治体では、避難所や2次避難などの対応に追われ、体調などを理由に在宅避難を選ぶ高齢者や障害者の実態把握や支援の開始に時間がかかりました。これは今回の能登半島地震での被災地自体に限ったものではなく、東日本大震災や熊本地震など過去の災害でも繰り返し課題となってきましたが、在宅で避難する高齢者などへの福祉的な支援は、国が費用を負担する「災害救助法」の対象には位置づけられていなかったこともあり、なかなか動きがとれない状況でした。こうした状況を受け、これまでは避難所を中心として、介護福祉士や社会福祉士などからなる災害派遣福祉チーム=DWATが高齢者の体調確認や避難生活の悩みの聞き取りにあたってきましたが、在宅で避難している人や車中泊の人などにも活動の範囲を広げることを想定しています。

 「しんどい人ほど避難所に来られない状況が続いている。そうした人は、在宅避難したり、車中にいたり、場合によっては広域に避難する。避難所という『場所』から『人』への支援を実現することが課題になっている」と指摘されてもいます(大阪公立大学菅野拓准教授)。

 東京でも首都直下地震などの大規模災害が発生することが予測されており、各社、各人が被災を防ぐ(防災)、最小限にとどめる(減災)に取り組むよう啓発活動が続けられています。都庁などでは、各国の言葉で災害時の対応に関する情報提供パンフレットが用意されています。

 先日、住みやすさ、魅力度、繁栄度に基づいて都市を評価する世界規模の「2025年世界のベスト都市ランキング (2025 World’s Best Cities)」調査結果が公開されていました。それによると、日本でランクインは、東京(4位)、大阪(42位)、名古屋(81位)、札幌(86位)とのことです。東京は、住みやすさ指数で4位、魅力度指数で4位、繁栄度指数で6位を獲得し、ランキングでは4位となりました。東京の持続可能で人間中心の都市景観へのコミットメントや都市の大規模なインフラ投資も評価されたポイントの一つとされています。また虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズのような新しい開発は、ビジネスとレジャーを融合した「垂直都市」を創造するものと評価されているようです。

 私は大規模災害が予測されている中でも東京という都市がこのような高い評価が得られていることに希望を感じます。もちろん、大規模災害の影響は計り知れないと思います。しかし私は、政府が各種法制度を構築、運用して被災企業、被災者の復旧復興を支援し、企業も人も、これまでの被災事例から教訓をしっかり学び、被災に備える、被災を最小限に抑えることが不可欠ですし、それが東京という都市の魅力を増すことに繋がると考えています。東京を含め、我が国の都市がいつまでもベスト都市として世界から評価されるようにあって欲しいと願っています。

 来年は、災害のない良い年でありますように。

写真(麻布台ヒルズのチームラボ)で記念写真

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