ニュースレター登録

Legal Contents 法務コンテンツ

  • TOP
  • 法務コンテンツ
  • 「事業継続計画策定は企業の法的義務であること」について(その1)

中野 明安

「事業継続計画策定は企業の法的義務であること」について(その1)

2023/02/28

「事業継続計画策定は企業の法的義務であること」について(その1)

 本年もどうぞよろしくお願いいたします(先月はお休みしましたので。)。

 2021年4月施行の「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」内で、2024年から介護業での事業継続計画(BCP)の策定が義務付けられました。

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768899.pdf#page=5

 そのため2024年までにBCP策定やそのBCPに沿って緊急事態を想定した訓練などを実施する必要があります。

 ただ、その他の事業者が事業継続計画(BCP)は策定しなければならないのか(義務)、策定することは有益(任意)、というものなのか、この点をすっきりと説明する文献は残念ながらあまり多くありません(有斐閣 ジュリスト1497号「鼎談 震災と企業の対応」の18ページ以降で「法的義務である」ことを熱く論じている私がいます(笑)。)

 一応、法的根拠を説明しておきます。

1 災害対策基本法第7条

 第1項は、「地方公共団体の区域内の公共的団体、防災上重要な施設の管理者その他法令の規定による防災に関する責務を有する者は、基本理念にのっとり、法令又は地域防災計画の定めるところにより、誠実にその責務を果たさなければならない。」としています。この「防災上重要な施設の管理者」とは、避難場所として適当な空地を有する施設等がなり得る、とされます(逐条解説災害対策基本法第7条の解説)。駐車場施設やエントランスのロビーなどは一時滞在施設として想定されるものですから、このような施設を有する企業は第1項に基づき、対応する必要があります。また、「防災に関する責務を有する者」とは防火管理者、防災管理者等が考えられる(上記解説)のですから、多くの企業において第1項に基づき対応することが必要です。

 そして、第1項では「地域防災計画に定めるところにより、誠実にその責務を果たさなければならない」とありますので、地域防災計画に何が書いてあるかが問題となりますが、例えば、丸の内総合法律事務所の所在する千代田区の地域防災計画には「2 事業所の役割 事業所は、その社会的責任を果たすため、自らの組織力を活用して次のような対策を図っておくことが必要である。(1) 社屋内外の安全化、防災計画や非常用マニュアルの整備、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定など事業活動の継続対策」とあります。また、私の居住する新宿区でも「新宿区地域防災計画 3 事業者の基本的責務 (4) 事業者は、震災時に重要業務を継続するための事業継続計画(BCP)を策定するよう努めるものとする。」と明示されています。地域防災計画の元となる防災基本計画(災害対策基本法第34条)の18ページには、「(3) 企業防災の促進 「・・・各企業において災害時に重要業務を継続するための事業継続計画(BCP)を策定するよう努める」(令和4年6月版)とありますので、どこの地域防災計画にも入っています。

 問題は「努めるものとする」という言い回し(行政文書)であり、それが義務性を曖昧にしていますが、いずれにせよ努力義務規定ではあります。努力義務は「最終的に結果までは求められないが、実施する努力(着手)は必要」とされるものです。したがって、企業は事業継続計画を策定するための具体的行動に着手することは必要であり、それは災害対策基本法に規定された法的義務であると言えるのです。

・・・他の法的根拠は次号に譲ります。今年も頑張りましょう。

主な研究分野