この2023年の災害にまつわる話題の筆頭は、なんと言っても「関東大震災100年」ということでしょう(そうでもない?)。
そうなんです。関東大震災関連イベント、ニュース、など8月、9月に集中していましたが、それ以前からも100年というメモリアル(不謹慎?)なこのときをしっかりと活用して、防災意識を啓発しようという意図がしっかり見て取れましたね。
たしかにイベントなどで、防災への意識付けが図られたとは思いますが、さらに、現代の社会問題に対応した災害対策も必要となってきているという情報が非常に有益だったと思います。事業継続を考える企業の皆様にも、データ連携や創エネなどの提案が進んでいるということがポイントでしょう。
最近、現代の状況に合わせた新たな災害対策が進んでいると言われていますが、その1つが、「データ集約・活用で迅速な避難、救助活動へ」というもの。災害時には、迅速かつ正確な判断による行動が求められます。近年、災害地のデータをリアルタイムで集約し、迅速な対応に繋げようという試みが拡大しています。
例えば、東急不動産はソフトバンクと共同でスマートシティプロジェクト「Smart City Takeshiba」を推進しています。そのPJでは、都市OSやデジタルツインを活用した防災力の強化や防災業務の効率化などの実証を行っていると言われています。
また、パナソニックホームズでは、以前より行っていた震災時のオーナー宅の復旧支援について、23年9月より地震被災リスク推定システム「P‐HERES(ピー・ハーレス)」の運用を開始し、より迅速な対応ができるようシステムを構築しています。これは防災科学技術研究所の各観測点で収録された加速度波形データをもとに、エリア別、建物の構法別(大型パネル構法・制振鉄骨軸組構法・重量鉄骨ラーメン構法)に解析して被災想定レベルを判定するというもので、その判定結果は、同社の顧客データベースにあるオーナー宅の所在地図上に色分けして表示することにより、対策本部が復旧支援要員の派遣の優先度や必要人数、復旧の技術的方法の検討をしやすくしたといいます。技術の進歩が災害に強くなるステップです。ありがたいです。
一方で、人口集中や高齢化によって在宅避難の必要性が高まっているとも言われます。ちなみに、防災白書によると、令和2年(2020年)の東京圏には約3691万人が居住し、総人口の約29.3%を占めている一方、1920年における東京圏の人口は約768万人(総人口の約13.7%)であり、現在の4分の1以下、総人口に占める割合も現在の半分程度であったとのこと。都内においても高齢化は進んでいることから、よくイメージされている避難所の避難ではなく、在宅避難の考えが普及しつつあります。心的ストレスによる急性心筋梗塞やエコノミークラス症候群などでの災害関連死は高齢者などの要配慮者に多いことからも、高齢化が進む社会において、心的ストレスが少なく自分のスペースが確保できる在宅避難が必要とされるでしょう。上記の事情に加え、人口密度の高い都市では避難所に入りきれない懸念があるという事情もあります。
在宅避難にあたっては、住宅インフラをいかに確保するかが重要になります。先述したように、災害情報のデジタルにおけるやり取りが増加するなかでの災害情報の入手、さらにはスマートホーム化などで、住宅で避難生活を送るにあたって、特に電気を確保する重要度は高まっているといえるかと思います。どんな家に住もうかと考える際には、このような観点も必要ではないでしょうか。
関東大震災100年にあたり、テレビやイベントで様々な啓発がなされていました。関心のある方、もちろん、関心があまり無かった方も、自分事として今一度、「くるかもしれない」「あるかもしれない」という意識をもって考えてみて頂きたいと思います。 良い年をお迎えください。
主な研究分野
- 弁護士:
- 中野 明安