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中野 明安

能登半島地震を考える

2024/01/31

能登半島地震を考える

 能登半島1月1日の石川県能登半島地震は、正月休みの私たちに、驚きと不安とを与えた衝撃的なできごとでした。帝国データバンクは1月19日、この地震による企業活動への影響のほか、企業防災(企業が行う自然災害への対策)に対する意識についての調査の結果を発表しています。有効回答企業数は1255社ということです。

 まず、能登半島地震による影響を受けた企業は13.3%ということでした。能登半島地震による自社の企業活動への影響(直接・間接問わず)の有無を聞いたところ、「すでに影響が出ている」もしくは「影響が見込まれる」とする企業は合計で13.3%となりました。既に影響が出ている企業からは、「社屋の一部が損壊した。幸い生産設備に問題はなかったが、一部配管漏洩や防煙ガラス破損、部材転落などの被害があった」(精密機械、医療機械・器具製造、富山県)といった、地震による直接的な影響を示す声が聞かれたようです。一方、「材料が納入できなくなり、工期延長が発生した」(建設、埼玉県)や「金属製品の納入を検討していたが、取引先の工場が被災して納品時期が不明とのことで、別製品に切り替えることになった」(専門サービス、茨城県)のように、被災した地域以外でもサプライチェーンなどへの間接的な影響がみられたとの回答があったようです。

 「影響がある」と回答した割合は大企業が多いようです。幅広い取引ネットワークを持つことから地方でのリスクも影響を受けることとなるということでしょう。また、災害時には消費マインドの低下が心配されます。今回も企業から、「震災による自粛・萎縮マインドにともなう地域経済活動の停滞も心配。」との回答もあるようです。
 今回の能登半島地震は、東日本大震災のような広域被害では明らかになりにくい「温度差」が発生しやすいのですが、報道が貢献しているのか、被災地と非被災地との温度差はあまり感じません。温度差があると、国の施策にも重大な影響が出てきます。被災地の復旧、復興が被災地のためであるだけでなく、被災者や被災企業と結びつくあらゆる関係者のためであること、自分事として考えることが大切です。

 今回、自分事として考えていることが帝国データバンクの調査結果で感じることもできました。企業の約95%が「企業防災」の大切さを改めて実感したということでした。企業として改めて大切だと考えた防災対策を聞いたところ、「飲料水、非常食などの備蓄」が39.2%、「社内連絡網の整備・確認」(38.3%)、「非常時の社内対応体制の整備・ルール化」(31.6%)、「非常時向けの備品の購入」(28.4%)などが挙げられたようです。「事業継続計画(BCP)自体の策定・見直し」(20.6%)も5社に1社が回答しています。
 「自然災害の強力な破壊力に対し、何かをするというより、起きた後の社員と社員の家族の生活をどのように安定させるかということを真剣に考えるきっかけになった。備蓄をどのように進めるかをしっかり検討していきたい」、「危機管理の重要性を再認識した。今回のように長期休暇中での災害は安否確認などに時間がかかる。緊急連絡網の整備と災害時での対応を常に議論することが重要だと実感した」との回答がなされていることを聞くと心強く感じます。

 今後、報道機関が出す情報量には変化があることと思います。しかし、私たちは、その情報量が減ることと復興が進むこととは一致していないことを認識しておくべきです。事業への影響はニュースバリューとしては低くとも、非常に重要なものです。引き続き、被災地の情報に積極的に触れること、被災地の情報に触れて、自分事として対応を検討することをお願いしたいと思います。そこから、新しい発想が生まれ、事業への影響を減らし、事業活動から社会還元をはかることができることとなります。

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