●登場人物
軽照男(かるてるお):とある中小企業の社長
高鳥雄三(こうとりゆうぞう):同社の法務部長
軽 照 男 : 高鳥くん、今度、うちの会社のイメージキャラクターを描いてもらうことをフリーのイラストレーターに発注しようと思うんだが、下請法は適用されないということでいいんだよな。
高鳥雄三: そうですね、うちの資本金は1000万円以上ですが、うちはイラストで商売していませんし、イラストを自前で作っているわけでもないですからね。
軽 照 男 : そうかそうか。それなら、わしのネゴシエーターとしての腕の見せ所だな。
高鳥雄三: 独禁法の優越的地位の濫用についても気をつけなければならないですよ。公取委を含む関係省庁連名で作成されたフリーランスガイドラインでは、①発注事業者が多数のフリーランスに対して組織的に不利益を与える場合、②特定のフリーランスに対してしか不利益を与えていないときであっても、その不利益 の程度が強い、又はその行為を放置すれば他に波及するおそれがある場合には、公正な競争を阻害するおそれがあると認められやすいとされています。優越的地位の濫用は継続的取引が前提ですので、個人的には、単発の依頼では問題にならないような気もしていますが、こういうガイドラインがある以上は気を付けなければいけませんね。
また、フリーランス法ができたら更に厄介ですよ。
軽 照 男 : フリーランス法って何だ?
高鳥雄三: 今国会に法律案が提出されている「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」のことです。フリーランス等を保護するための法案で、保護の対象となる「特定受託事業者」に対して下請法類似の保護が与えられます。就業環境の整備として出産育児等への配慮やセクハラパワハラ防止措置、継続的契約の場合の解除予告が必要とされるなども盛り込まれています。
軽 照 男 : 具体的には誰が保護されるんだ?
高鳥雄三: 従業員を使用しない個人事業主と代表者のみしかいない法人ですね。ようするに、一人だけで事業をやっている場合には、個人・法人のいずれの形態でも保護されるということです。
軽 照 男 : 従業員を使用しているかどうかはどうやって確認するんだ? 高鳥雄三: おお、社長!いいところに気がつきましたね。そこは法律上何の手当もありません。下請法と違って登記でも確認できないところなので、委託者が気を付けるしかないですね。取引に入るまえにフリーランス法の適用対象かどうかを申告させて確認するということでしょうか。
軽 照 男 : ふーむ、面倒が増えるのう。家族が手伝っている場合などはどうなんだ?
高鳥雄三: 家族であっても業務に従事している方がいれば保護からは外れます。ただ、その辺を外部から把握することは難しいことも多いので、申告を踏まえて判断するしかないかも知れません。
軽 照 男 : 支払についても下請法と同じような規制になるのか?
高鳥雄三: 給付の日から60日以内という点は同じです。ただ、下請法と違って、遅延利息の定めはありませんね。
軽 照 男 : フリーランスよりもわしを保護してほしい気持ちになってきたぞ。
(文責:経済法研究チーム)