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フリーランス法のおさらい

2025/02/28

フリーランス法のおさらい

 読者の皆様は既にご存知かと思いますが、昨年の11月1日からフリーランス法の施行が開始されております。施行日の1ヶ月前である昨年10月1日に、公正取引委員会は、同法の違反事業者に勧告や命令を実施する場合には事業者名や違反内容を公表するとの運用基準を明らかにしておりますが、本執筆時点(2025年2月25日時点)において同法違反の公表事例はまだありません。もっとも、公正取引委員会は、今月5日の定例会見において、昨年10月に公表したフリーランス法施行前の実態調査などで問題事例が多かった業種(建設業、情報通信業、卸売業、小売業等)の発注者事業者3万社を対象にして、フリーランス法上の問題となる行為の調査を開始する旨発表しており、今後、こうした調査を踏まえて、フリーランス法に違反する行為について積極的に執行や公表がなされることが予想されます。フリーランス法への実務対応については昨年の9月に弊所にてセミナーを実施させていただきましたが、公正取引委員会の昨今のこうした動きを踏まえて、本稿においては同法の適用対象と規制内容の概観と注意点を簡単におさらいしておこうと思います。

1 適用対象について

 まず、適用対象について、フリーランス法は、2024年11月1日以降に行われた「業務委託」のうち、その相手方が「フリーランス」である場合に適用されます。ここでいう「業務委託」とは、下請法とは異なり、業界業種は関係なく、また委託事業者が自ら用いる役務の提供の委託(=再委託ではない役務の業務委託)も含まれる点にご注意ください(フリーランス法2条3項)。また、「フリーランス」(条文上は「特定受託事業者」)は、個人と法人に分かれ、個人の場合は、従業員を使用しない事業者、法人の場合は、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者。)がなく、かつ、従業員を使用しない事業者が該当します(フリーランス法2条1項)。委託事業者の立場からは、役員や従業員の有無について、相手方に対して確認して報告を受けた内容をもとに判断することが実務上多いかと思われますが、相手方の報告内容が誤っていた場合においても、委託事業者に対してフリーランス法違反が成立しうる点にご注意ください。もっとも、公正取引委員会はHP上のフリーランス法に関するQ&AのQ13において、かかる場合には是正の必要があるため指導・助言は行うことがあるが、勧告や命令を直ちに行うものではないと回答しており、相手方に確認する場合には、記録に残る方法での確認を行っていただくのが実務上望ましい対応となります。

2 規制内容について

 次に、規制内容について、フリーランス法は、①取引条件の明示義務(フリーランス法3条)、②報酬支払期日の設定義務、報酬の支払遅延の禁止(同法4条)、③広告等による募集情報の的確表示義務(同法12条)、④ハラスメント対策義務(同法14条)、⑤禁止行為(受領拒否、買いたたき等)(同法5条)、⑥育児介護等への配慮義務(同法13条)、⑦解除等の予告義務(同法16条)、の規制を設けております。そして、委託事業者もフリーランスに該当する場合には①のみが適用され、委託事業者がフリーランスではない場合には、業務委託の継続期間が、1ヶ月未満の場合には①~④が、1ヶ月以上6ヶ月未満の場合には①~⑤が、6ヶ月以上の場合には①~⑦までがそれぞれ適用されるとの建て付けになっております。個々の規制の内容としては、下請法にも同様の規制が存在するものについては、概ね下請法と同様又は類似の考え方によっておりますが、①(取引条件の明示義務)に関して、明示すべき事項として、資金決済サービス(●pay等)を利用した報酬支払いの場合に同支払い方法に関する事項が挙げられていたり(フリーランス法施行規則1条1項11号)、②(報酬支払期日の設定義務)に関して、再委託の場合には、一定の適用条件を満たせば元委託の対価の支払期日から30日以内に支払期日を設定することができるとされているなど(フリーランス法4条3項)、一部下請法との規制内容が異なっているものもあるため注意が必要です。また、③(広告等による募集情報の的確表示義務)、④(ハラスメント対策義務)、⑥(育児介護等への配慮義務)、⑦(解除等の予告義務)のように、下請法には定められていない規制もいくつか存在しており、(これらの規制が適用される場合には)フリーランス法独自の実務対応が求められます。

3 おわりに

 このようにフリーランス法の規定の内容や考え方は下請法と同様または類似する部分も多くありますが、その適用対象や一部の規制内容については、フリーランス法独自の考え方・解釈がなされ、個々の事例との関係では慎重な判断が求められる場合も多くあるものと思われます。フリーランス法の考え方や規制内容、また個々の事例との関係での疑問点・不明点等がありましたら、お気軽に弊所にご相談いただければと存じます。

(文責:山下)

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