ニュースレター登録

Legal Contents 法務コンテンツ

中野 明安

令和5年度千代田区事業所防災アンケート調査の結果概要について

2023/11/30

令和5年度千代田区事業所防災アンケート調査の結果概要について

 丸の内総合法律事務所が事務所を構える東京都千代田区で、令和5年度千代田区事業所防災アンケートの調査結果の概要が発表されましたので、ご連絡致します。なお、これは本年7月に千代田区内の事業所6000事業所を対象にして調査を実施したものの調査結果であり、調査に回答した事業所に概要版が送られたものです。

【調査の概要】  

調査対象 千代田区内の事業所
抽出方法 層化二段無作為抽出
対象数  6,000事業所
調査方法 郵送配布-郵送回収 
インターネット回答回収数(率) 1,703事業所(28.4%)
調査時期 2023年(令和5年)7月


 【調査結果】
  事業所規模による備蓄率の格差
 調査結果では、水・食料・携帯トイレのいずれかを備蓄している事業所は55%であるとして、平成22年度は30%台だったものの上昇が見られたことが報告されています。これを従業員規模別でみますと、100人以上の事業所では備蓄率が9割以上ですが、規模の小さい事業所ほど備蓄率は低くなっているとのことです。ただ、一番備蓄率の低い「4人以下の事業所」でも39%となっており、意識の高まりは認められるものと思います。 
 なお、備蓄しない理由として挙げられたものは、「保有するスペースがない」が49%、「予算がない」が30%となっています。わかりやすい理由ですね。

【防火訓練・防災教育】
 防災訓練を実施している事業所は47%との結果ですが、事業所規模10人未満の事業所では4割以下となっており、10人以上の事業所と比較して低い実施率でした。防災教育は、千代田区の条例に定められた取組であり、また、防災訓練は災害対策基本法等の法令でも定められた取組ですので、やはり意識の啓発が必要と感じられるものです。

【帰宅困難者対策】 
 帰宅困難者対策について取り組み済みが20%、取組中が15%となっており、まだまだ対策は十分とは言えません。2011年3月の東日本大震災を経験して、その重要性は認識されたと思いますが、逆に、「なんとかなった」と勝手に判断していることも推測されます。首都直下地震などを想定すると、東日本大震災の時の帰宅困難者問題とは全く異なる様相があります。対策の重要性、マニュアル作成などの取組をすべきと思います。

【BCP策定の状況】 
 BCPについて「知っている」と回答した事業所は40%で、「聞いたことはある」を含めますと59%となります。ただ、BCPを策定済みとした事業所は18%、策定予定が28%であり、知っていても、準備に至らないという状況が確認できます。

 従業員規模別では、300人以上の大企業では認知度93%、策定済みが74%で、策定予定を含めると95%となっています。公表された資料では明示されていませんが、これと比較すると、300人未満の従業員規模の事業所の策定率が圧倒的に低いものとなります。
 
 事業規模とBCPの普及率は以前から問題となっており、私も「BCP策定、中小にこそ」という記事を2016年に日経産業新聞に掲載していただきましたが、その後も様子に変化がないことから、今後の取組をどのようにすべきか考えてゆきたいと思いました。

主な研究分野