内閣府の首都直下地震帰宅困難者等対策検討委員会は8月26日、首都直下地震などを想定した帰宅困難者対策の新たな方針を発表しました。これまでの国のガイドラインでは、大規模地震の発生後3日間は「むやみに移動を始めない」など帰宅抑制を求めていましたが、この原則は維持する一方、東日本大震災の発生から概ね10年を経て、近年においては、鉄道等公共交通機関の耐震化やデジタル技術の進展など、帰宅困難者等対策において考慮すべき社会状況の変化が認められていることを踏まえ、3日間の「一斉帰宅抑制」の基本原則を維持しつつ、被害状況等に応じた柔軟な対策を講じることが、今後の帰宅困難者等対策の実効性向上を図る上で有用であるとしています。加えて、令和3年10月7日に発生した千葉県北西部を震源とする地震において、鉄道が一時運行を停止し、駅周辺を中心に深夜遅くまで多くの滞留者が発生する事態となったことを踏まえ、マグニチュード7クラスに至らない地震においても帰宅支援が必要となる場合があることが認識されました。こうした状況を受けて、「首都直下地震帰宅困難者等対策検討委員会」では帰宅困難者等対策に関する今後の対応方針について取りまとめを行いました。
詳細は、https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/kitaku/pdf/houshin.pdf にありますが、以下に対応方針の概要をまとめましたので、ご報告します。
帰宅困難者等対策の一層の実効性向上を図り、迅速かつ円滑な応急活動を確保するため、(1)~(3)の観点から具体の対応方策を検討します。
(1)対策の実効性向上を図るための、一斉帰宅抑制等の正しい理解と認知度の向上
(2)デジタル技術の活用等による帰宅困難者の一斉帰宅抑制等の適切な行動の促進
(3)一斉帰宅抑制の適用期間中に一部鉄道が運行再開する場合の鉄道帰宅者への支援
マグニチュード7クラスに至らない規模の地震による鉄道運休に伴う駅前滞留者対応について、例えば、冬の夜間の発災で鉄道運行再開の見通しが立たないなど、安全確保の観点から駅前滞留者に対し、共助や公助による対応が必要となる場合も考えられるため、以下の観点での対応方策を検討する。
(1)駅周辺の混雑状況の把握。連絡手段の整備
(2)滞留者の発生抑制(タクシー事業者、バス事業者に対する事業継続の要請)
(3)対応状況に関する情報提供(運行再開の見通し、代替輸送の有無、滞留場所の情報発信)
(4)帰宅手段の確保(終電、終バス意向の運行継続の実施の可否の判断)
(5)企業等の出勤抑制
✓ 翌朝においても鉄道の運行状況が正常化しないことが見込まれる場合は、国、地方公共団体は、企業等に対する出勤自粛等の呼びかけを行うとともに、企業及び従業員等は、出勤の必要性を十分考慮し、可能な限り出勤抑制等の実施に努める。
✓ 企業等は、出勤抑制にあっても活動への影響を最小限に抑えられるよう、平時よりテレワーク体制の構築に努める。
「平時よりテレワーク体制の構築」、これが最近のコロナ禍で学んだデジタル技術の進展の意味するところの最大の知見であり、本音ということでしょうか。