近年、日本海の海面温度が平年より高い状態が続いています。海の温度上昇と聞くと、漁業や海洋環境の問題を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、この変化は一次産業だけではなく、企業の事業継続(BCP)にとっても無視できない影響をもっています。海面温度の上昇は、企業活動にさまざまなリスクを生じさせる可能性があるからです。
まず、海面温度の上昇は気象の極端化につながります。日本海が高温になると、冬には海からの水蒸気が増えるため、日本海側で大雪が起こりやすくなります。大雪は、交通障害や物流遅延、従業員の出勤困難などを引き起こし、企業の活動に直接影響します。また、夏には海面温度が高いことで大気が不安定になり、局地的な大雨や雷の発生が増えることもあります。こうした気象の変化は、従来の経験に基づく想定を超える事態をもたらし、事業継続にとって新たな課題となります。
次に、海面温度の上昇は港湾インフラや海上物流にも影響を与えます。高水温は台風の発達を強める傾向があり、日本海でも勢力を保ったまま北上する台風が見られるようになってきました。港湾施設の被害や船舶の欠航が発生すると、サプライチェーンが滞り、製造業だけでなく流通業やサービス業にも広く影響が及びます。
また、高い海水温は赤潮や貝毒の発生、高潮や高波といった海洋災害のリスクも高めます。沿岸部に工場や倉庫を構える企業にとって、操業停止の危険性が増すだけでなく、従業員の安全確保の面でも注意が必要になります。
このように、海面温度の上昇は漁業分野に限られた問題ではなく、企業のBCPに密接に関わる新しいリスクといえます。企業としては、気象・海象の変化を前提にした事業継続計画の見直しや、物流の多様化、代替手段の確保、在宅勤務体制の準備、臨海部拠点のリスク再評価など、気候変動への適応をBCPに組み込むことが重要になってきます。
日本海の海面温度上昇は、決して「遠い自然現象」ではありません。企業の事業継続に直接関わる現実的なリスクです。気候変動の影響を踏まえた柔軟で強いBCPを整えることが、これからの企業活動を支える大切な鍵となるでしょう。
主な研究分野
- 弁護士:
- 中野 明安

