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知財判例ヘッドライン vol.99

2026/04/30

知財判例ヘッドライン vol.99

1 「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(案)及び「契約書ひな形」(案)の公表

 公正取引委員会、中小企業庁及び特許庁が、令和8年3月30日に、「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(案)(以下「本指針案」といいます。)を公表しました。
 本指針案は、「契約書ひな形」案とあわせて、令和8年4月28日を期限とするパブリックコメントによる意見募集にかけられている段階ではありますが、知的財産・ノウハウの取引適正化に関する取引環境の整備の観点から参考になる内容ですので、今回は、その概要についてご紹介します。

2 本指針案の目的・概要

 本指針案は、中小企業等の取引上の立場の弱い事業者から、知的財産権、ノウハウ及びデータを無償又は低廉な価格で吸い上げる行為が依然として存在していること等を背景に、知的財産権、ノウハウ及びデータの取引に関して特に独占禁止法上の観点から問題となり得る行為を整理し、適正な取引を実施する上での対応策を示すことを目的として策定されたものです。

 本指針案では、知的財産権の帰属や取扱いを対象とした独占禁止法上の優越的地位の濫用規制の考え方に加えて、取適法及びフリーランス法との適用関係等がまとめられています。具体的には、総論として、独占禁止法、取適法及びフリーランス法の適用関係等を示したうえで、各論として、「1 情報の管理」、「2 知的財産権等の価値の適切な評価」、「3 その他の行為類型」について、それぞれ、

 ⑴基本的な考え方、
 ⑵基本的な対応方針、
 ⑶独占禁止法等の考え方及び問題となり得る事例

を示すとともに、

 ⑷競争政策上の望ましい対応
 ⑸実践例

が整理されています。

3 各論で取り扱われている考え方の概要

 各論部分は、上記のとおり、①情報の管理、②知的財産権等の価値の適切な評価、③その他の行為類型の3つの論点ごとに整理が行われており、各論点ごとの概要は下記のとおりです。

1 情報の管理知的財産権等についての当事者間での情報管理及びNDA締結に関する考え方
2 知的財産権等の価値の適切な評価知的財産権等に関する対価設定等に関する考え方
3 その他の行為類型出願干渉、知財訴訟等のリスクの転嫁、共同研究開発といった特定の状況下における知的財産権等に関する考え方

 例えば、「1 情報の管理」では、基本的な対応方針として、

 ア 自社が有する秘密情報の整理・管理
 イ 公平なNDAの締結
 ウ 適切な範囲のNDAの締結
 エ 工場見学を受け入れる際に秘密情報の管理

 という4つの観点を示すとともに、観点ごとに、望ましい対応方針が具体的に整理されており、実務上参考になると思われます。

 上記アについては、下記のように具体的な対応方法が紹介されており、実務上も比較的使いやすい内容になっています。

ア 自社が有する秘密情報の整理・管理
 取引当事者の双方は、契約交渉が本格化する前に、自社が有するノウハウ等のうち、何を秘密情報とする必要があるかを整理することが望ましく、自社のノウハウ等を、開示レベルの観点から整理することが望ましい。最低限の整理として、
 ①NDAなしで開示できる情報
 ②NDA締結後に開示できる情報
 ③いかなる状況であっても開示すべきでない情報
 に区分しておくことが重要である。例えば、整理すべき情報としては、部品の組合せ方法、新規素材の成分、製造ノウハウ、金型等設計図面や設計・加工データ、公表前のデザイン、NDA等の他社との契約等により限定的に開示された営業情報・限定提供データのほか、取引価格や取引先に関する情報、接客マニュアル、顧客の個人情報等が考えられる。
 また、秘密情報とすべき情報の存在を自社内で把握できていない場合は、競合他社との製品・サービス等の差異を分析することが有効である。例えば、他社と比較して競争力が強い製品やサービス、高い売上げに結びつく特徴的な性質を持つものをピックアップし、その個性や特徴を生み出している要因を分析することで、従業員が業務の中で記憶した製造ノウハウなど文章化されず存在する情報など、意識して確認しなければ、把握困難と考えられる情報も含め、価値ある情報を把握(発掘)する契機となる。

(本指針案・10頁)

 
 また、本指針案とあわせて、本指針案に関する知的財産に係る取引を行うにあたって注意すべきポイントがまとめられた「契約書ひな形」案が作成・公表されるとともに、過去に公表している契約書ひな形やガイドライン等も適宜整理・引用されています。
 そのため、本指針案は、抽象的な法解釈ではなく、行為類型ごとの個別具体的な考え方が比較的多く整理されており、実務上も、そのまま自社の知的財産に係る取引のチェックリストとして利用可能な内容になっておりますので、正式に公表された際には、是非活用していただければと存じます。

以上

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