皆様が実務上の対応を余儀なく強いられれたフリーランス法は、今月で施行から約1年を迎えました。
公正取引委員会は、昨年10月1日には勧告や命令を行った場合には事業者名やその違反内容等を公表することを表明し、ほぼ同時期に、昨年5月27日から6月19日までに実施した各業界に対するフリーランス取引に関する調査に関して、同年10月18日に同法の認知度やその当時の取引の状況について公表しました。その後も公正取引委員会による調査は着々と行われました。施行から約1年を迎えた時点で指導等は441件、勧告は4件であることが公表されました。
弊所では、昨年の9月にフリーランス法に関するセミナーを行ったほか、今年の2月28日に掲載したニュースレター(第160号)においてもフリーランス法の概要のおさらいを行ったところですが、今回は、現段階で公表されている事例と公正取引委員会による調査結果につき、紹介していきたいと思います。
1 おさらい
まず、今回も簡単におさらいをしておくと、フリーランス法においては給付内容や報酬額、支払期日等、同法3条1項及び同法施行規則(令和6年公正取引委員会規則第3号)1条各号記載の事項を書面等に記載する必要があるところ、それを欠く場合には公正取引委員会は勧告を出すことができます(フリーランス法8条1項。なお、これが下請法における3条書面の場合と異なる点です。)。また、報酬支払期日について給付受領日から60日以内の期間で定める必要があり、これが定められなかった場合には委託事業者が給付を受領した日、上記の期間を超える期日が定められた場合には給付受領日より60日を経過した日が支払期日とみなされます。
2 公正取引委員会による指導
フリーランス法に関して今年3月28日にはゲームソフトウェア業等のフリーランスの業務形態が多く見られる業界において45名の事業者に対し、発注内容や支払期日等の記載方法を是正するよう指導を行いました。具体的には、報酬額や支払期日等の取引条件の明示をしていなかった事例(3条1項)や支払期日に報酬を支払わなかった(または報酬支払義務に違反するおそれがあった)事例(4条1項)について指導がなされており、そもそも支払期日を明記していなかった事例のほか、「翌月末日まで」といった不明確な記載の事例、給付の受領日や検査完了日等の明記をしていなかった事例が挙げられています。このように、公正取引委員会による従前の発表のとおり、積極的な調査や処分がされています。
3 公正取引委員会による勧告事例
上記の流れの中、今年6月に3件、9月に1件、合計4件の勧告事例につき、事業者名とその違反内容等が公表されました。
まず1件目は株式会社光文社に対する勧告事例であり、同社が発行する月刊誌等に掲載される原稿や写真、ヘアメイクや撮影器具の用意等の業務を特定受託事業者であるライターやカメラマン等に委託をした際に給付内容や報酬額、支払期日等を明示せず、かつ、同社が給付を受領した日までに報酬を支払わなかったという内容です。本事例においては特定受託事業者の人数は31名で、違反期間はフリーランス法施行日の昨年11月1日から今年の2月27日までとされています。
2件目の事例としては、同じく出版業界である株式会社小学館に対する勧告事例であり、光文社の事案と同日に公表されています。こちらも上記の光文社の事案と同様の違反内容が認定されていますが、規模としては特定受託事業者の人数は191名とかなり多数であり、かつ、違反期間は昨年11月1日から本年6月17日までと長期間に亘るものであると言え、事案としては重大であると言えます。
3件目の事例は島村楽器株式会社に対する勧告事例であり、音楽教室でのレッスンやイベントでの演奏等の委託に関し、昨年11月1日から今年2月7日までの間に、およそ90名程度の特定受託事業者に対し、上記の事案と同様に取引条件を明示せず、支払期日までに報酬を支払っていないほか、11名に対しては無償で体験レッスンを行わせたという不当な経済上の利益の提供を要請したという点でも勧告がされています(法5条2項1号)。こちらも事案としては、期間が3ヶ月であり、人数も多数いるほか、取引条件や報酬に関するもののほか、不当な経済上の提供も加えて行われていることから、違反の程度としては相当程度高いものと言えます。
最後に、4件目の事例は株式会社九州東通に対する勧告事例で、テレビジョン放送事業者等から請け負った番組等の制作に係る動画撮影や出演等の委託に関し、昨年11月1日から今年3月31日までの間に、特定受託事業者44名に対し、同様に取引条件等を明示せず、支払期日に違反した事例です。
上記の各勧告事例は、フリーランス法に関する認知度も他の業界に比べ低かった出版業界等の学術研究、専門・技術サービス業や放送業界等の生活関連サービス業、娯楽業等といった、これまでフリーランスの業務形態が多く、かつ、頻発するトラブルが問題視されていた分野での勧告であり、社会的関心も強く、かつ、その内容や規模、期間等を踏まえ、重大であると言える事案に対してなされているものと考えられます。
以上の通り、公正取引委員会による各事案の勧告及び公表はいずれも、取引条件の明示や支払期日での報酬の支払について比較的重大な違反があった事例において勧告がなされており、従前の方針に従って公表がされています。もっとも、公正取引委員会が昨年10月18日に発表した調査結果を踏まえると、上記各行為と同程度に取引実態として特に割合が高かった買いたたきや価格転嫁(同法5条1項4号)についても今後、勧告され、引き続いて公表されることが予想されます。もし今後、同法に関連してご不安を感じられた場合には、お気軽にご相談いただければと存じます。
(文責:木下)

