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中野 明安

被災者支援in静岡(台風15号)

2022/11/30

被災者支援in静岡(台風15号)

 令和4年台風第15号は2022年9月23日9時に室戸岬の南で発生した台風で、いわゆる「雨台風」であり、勢力はあまり強くなかったのですが(最低気圧は1000hPa)、この台風が日本に接近した影響で静岡県などでは9月23日夜から24日朝にかけて記録的な大雨となり、静岡県内の11市町(静岡市、島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、吉田町、川根本町、浜松市,磐田市、掛川市、森町)に記録的短時間大雨情報が16度(計32回)も発表されたものです。でも、みなさん、もうおそらくすっかり忘れられているものと思います。今、静岡では水害からの復旧の真っ最中です。でもなぜ皆さんが忘れてしまっているのでしょうか。それはマスコミが伝えないからです。水害の特徴は、地震や津波と異なり、水が引くと、家屋が倒壊しているなどの状況がなく、マスコミが写真や映像で被災を伝えにくいからです。さらに真正面から言えば、「被災地の絵」にならないからです。・・・しかし、私たちは忘れてはならないと思いますし、できる支援をすべきですし、必要な制度が立ち上げられるよう多方面からの声が挙がることが期待されます。被災者は復旧に困難を極めており、弁護士会でも相談活動が現在でも続けられています。以下は、弁護士等による被災者相談活動について報告されたものを転載します。
(11月11日)


(1)被害の概要
https://www.pref.shizuoka.jp/kinkyu/typhoon15/documents/1107saitai.pdf
最新の数字では、床上浸水が5600件程度です。
罹災証明の調査ごとに今後も増加していきます。
(床下浸水については、罹災証明を申請しない人が相当いるため最後まで実数の把握は難しいと思います(罹災証明の発行数=被害件数の報告となっているため))。

(2)静岡県弁護士会の相談対応
電話と現地の相談合計は、今日時点ではおよそ820~830件程度と見込まれます。
うち、Googleフォームにご報告いただいている件数がちょうど800件程度、電話相談が187件です。
派遣弁護士は延べ250名~300名程度、他士業からもそれ以上の先生方がブースに入っていただいています。
11月14日からは、現地相談ブースが、静岡市の清水区役所内に一本化されます。また、平日のみとなります。
土日については、市と連携して、日曜日などに、被災地域の体育館などを借りた現地相談会を開催する予定ですが、市からの報告では、場所の確保が難航しているとのことです。

(3)被災地区での相談会など
被災地区での説明会&相談会への弁護士派遣は、静岡市、袋井市、浜松市などで10回ほど実施しており、いずれも災害NPO、自治会、自治体、社協などと連携した結果、満員御礼の地区が多い状況です。
多くの地区相談会では、食事提供、足湯マッサージ、コーヒーサービスなども同時に行っています。
今後も週に1度ほどのペースで地区相談会が開催されます。
また、案件によっては、技術士の先生などと同行しての現地調査活動、報告書作成活動なども実施しています。
多くは土砂崩れの現場への同行調査になります。
被災者への現状への専門家としての説明の意義、自治体の関係部署への対策要請の意味、また、長期避難世帯(支援法)の認定資料としての意味、などがあります。
また、包括支援のスタッフ、ケアマネージャーさんへの説明会、相談会も実施しています。これにより、こうした職員の方が担当している高齢被災世帯などへの間接的支援の効果が期待されます。

(4)御礼
全国から毎日のように派遣をいただいており、既にご報告させていただいた単位会さま関係のほか、関弁連、近畿弁連からは大量の派遣、また、岐阜、愛知からも派遣をいただいています。
また、日弁連、弁連、全国の単位会、個人の先生方からたくさんの義援金も頂戴しています。本当にありがとうございます。

(5)状況の変化
最近は、リピート相談の方の占める割合がかなり増えています。人によっては4回目、5回目のご相談の方もいらっしゃいます。
罹災証明の判定に対する相談も多く、すでに助言の結果、判定変更に至った方がかなりでている模様です(私のところにも個別に喜びのメールなどがきています)。
日々の相談件数は逓減している印象です。

(6)弁護士会、弁護士の提言、申入れなどの活動
ア 住まい支援の申入れについて
 当初、静岡市が応急仮設住宅の提供すら予定していなかったため、様々な関係機関に働きかけを行うともに、会として ①応急仮設住宅の早期提供開始と、②応急仮設住宅の対象にならない半壊以下(未満)の世帯への住まいの支援策実施の要望を行いました。
 
 ①については、即日に静岡市が応急仮設住宅の提供を決め、②についても、少しあとに実施を決めてくれました。
 ②について:https://www.city.shizuoka.lg.jp/412_000103.html

イ 災害ケースマネジメント
 災害ケースマネジメントの一環として、①在宅被災者の早期の訪問調査、②今後の見守り支援活動(いわゆる支えあいセンターの設置。しかも在宅被災者を含む)を、こちらは非公式に申入れました。
 
 ①については、市の関係部署や関係団体とも調整の上、実現しました。
 ニュース動画:
https://look.satv.co.jp/_ct/17583650?fbclid=IwAR0zjutIkPWxQU36HKhaFox28I61ASxqblueH9P3kdRymi5KVtZYruRsVjY
 静岡新聞記事添付
 ②についても、実施する旨の回答を得ています。

ウ 公費解体
 今後は、現在、全壊のみしか公費解体の対象になっていないので、自治体財源を原資とした大規模半壊以下(できれば半壊以上)への公費解体の適用を申し入れる必要があると考えています。

主な研究分野