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中野 明安

関東弁護士会連合会平成29年シンポジウムの資料「BCP教訓集」のご紹介

2025/04/30

関東弁護士会連合会平成29年シンポジウムの資料「BCP教訓集」のご紹介

 関東弁護士会連合会では、昨今の自然災害の発生状況に鑑み、平成29年度定期大会において「平常時の災害対策の重要性」を考えるシンポジウムを開催しました。
 そして、平常時に誰が何をどのように準備することが災害対策として重要かということを検討するにあたり、私たちは事業者、特に中小企業の災害対策に着目しました。中小企業は、中小企業白書を見ても、「事業継続計画(BCP=Buisiness Continuity Plan)」の策定は20%に満たず、依然として策定が進んでいません。

 平常時の災害対策の重要性を考える上で事業者の「事業継続計画(BCP)」は重要な位置づけであり、中小企業庁事業環境部企画課経営安定対策室のご担当者の皆様とも協議をさせていただくなかで、1つの結論として、平常時に従業員、利用客、利用者との間に課されている安全配慮義務は災害時にはどのような位置づけになるのか、災害に関する裁判例を取り上げて、そこから得られる教訓を抽出し、これに解説を加えることが防災や事業継続を目指す事業者の皆さんにとり有益であろうということになりました。
 裁判所は紛争解決をする機関として、災害時及び災害対策に関する企業の責任について、最終判断を示します。裁判所が災害時における安全配慮義務等について、どのように考え、判決等を出しているのか、そこから得られる教訓は事業者の皆様にとり重大な関心事と言えることと思います。

 判決から教訓を抽出すること、また、その解説については企業法務を担当する弁護士が半年にわたり議論を重ねて作成したものが、「事業継続に求められる企業の安全配慮義務と安全対策」(教訓集)です。

シンポジウムのページ https://www.kanto-ba.org/symposium/detail/h29.html
教訓集 https://www.kanto-ba.org/symposium/detail/file/h29_jirei.pdf

 この教訓集の読み方は以下の通りと解説されています。(もちろん、私が書きました。)

1 災害に関連して事業者が被告等になっている裁判例を取り上げました。災害時の事故等の被害者(遺族)の方々は「同様の事故が二度と起こらないで欲しい」というお気持ちを抱かれると思います。裁判では被害者となった方が主に原告となり、裁判所は当該主張を正しいものと判断したり、逆に、請求は妥当ではないと判断します。その際に述べられる判決理由は、同様の場面に直面するかも知れない私たちに貴重な教訓となるメッセージとなっています。裁判の代理人となる弁護士ができることは、当事者の思いをしっかりと受け取り、裁判例から抽出される教訓をしっかり伝える(伝承する)ことかと考え、本書の執筆を思い至りました。 2 本書は本文(第1部)と参考資料(第2部)との二部構成にしております。第1部では「安全配慮義務と事業継続」の関係についてご説明し、第2部に記載した裁判例から導かれる「教訓」を示して、それに解説を加えました。

2 本書は本文(第1部)と参考資料(第2部)との二部構成にしております。第1部では「安全配慮義務と事業継続」の関係についてご説明し、第2部に記載した裁判例から導かれる「教訓」を示して、それに解説を加えました。
 第2部では、裁判例について事案を簡潔に紹介して、その概略を把握できるようにしてあります。また、裁判の争点と判断、そしてそこから得られる教訓という順序で記載しています。

3 第1部の解説では、裁判所が判決を書く際、災害時における事業者のどのような対応を問題としていて、どのように検証しているかをご確認いただけるよう、なるべく分かりやすく解説しています。したがって請求が認容されたか棄却されたかは重要ではありません。当事者の思いと裁判所の思いが詰まった教訓、そして企業法務弁護士の思いが詰まった解説をご一読ください。

4 第2部においてはこの解説にあたった弁護士が、業務として裁判に携わっている経験に基づき、適切に判決を読み取り、裁判所の判断の重要なポイント、教訓となるポイントを抽出することを試みました。

5 事業者の皆様の事業継続には、従業員、利用客、利用者らの安全に配慮することは不可欠です。それは災害時においても同様です。そのために、今、何をしておくべきか本書をご覧いただき、ご確認いただきたいと思います。

6 事業者の皆様の事業継続計画策定の「安全対策」等の項目において参考にしてくださるようお願いいたします。

5月の連休を前に、もしお時間があればご一読をいただきたく、ご紹介致しました。

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