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経済法トピックス

2023年度の公正取引委員会による下請法の執行状況

2024/04/30

2023年度の公正取引委員会による下請法の執行状況

経済法トピックス

 2023年度(2023年4月~2024年3月)において、公正取引委員会が、下請法に違反する行為が行われたとして、下請法7条2項に基づき勧告を行った事例は合計で12件ありました。

 各案件の概要は以下の表のとおりでして、事案内容として多かったのは、下請代金の不当減額に加えて、金型の無償保管が不当な経済上の利益の提供要請にあたるとされた事案でした。また、大きく報道されたとおり、日産自動車について、下請法違反事例として過去最高額となる30億円超の減額が認定されたことも、下請法の執行状況としては注目されるところです。

日付対象企業違反事項備考
2023/6/29㈱ノジマ下請代金の不当減額 2019年7月から2022年10月まで実施
減額金額合計7310万9046円
2023/11/30サンケン電気㈱不当な経済上の利益の提供要請 金型の無償保管の事案
2021年7月1日から2023年10月27日まで実施
2023/12/22㈱伊藤軒下請代金の不当減額 不当返品 2022年6月から2023年5月まで実施
減額金額合計837万0460円、返品商品の代金相当額合計66万1650円
2024/1/23㈱メタルテック下請代金の不当減額 2022年5月から2023年6月まで実施
減額金額合計6193万7555円
2024/2/15王子ネピア㈱不当な給付内容の変更及び不当なやり直し 発注の一部取り消しに伴い無駄になった資材等に係る費用、人件費として下請け事業者が2622万7735円を負担
2024/2/21ダイオーロジスティクス㈱購入・利用強制 貨物運送の利用強制の事案
下請事業者が強制利用した金額合計6995万7800円
2024/2/28サンデン㈱不当な経済上の利益の提供要請 金型の無償保管の事案 2022年1月1日から2023年8月までの実施
2024/3/7日産自動車㈱下請代金の不当減額 2021年1月から2023年4月まで実施
減額金額合計30億2367万6843円
2024/3/12コストコホールセールジャパン㈱下請代金の不当減額
不当返品
2021年11月から2023年12月まで実施
減額金額合計3350万3828円、返品商品の代金相当額合計199万8476円
2024/3/15㈱ビッグモーター
㈱ビーエムハナテン
手続規定、実体規定等多数に違反具体的な違反内容は以下のとおり。
・下請法3条1項の書面交付義務違反
・下請法5条の書類の作成・保存義務違反
・下請法9条1項に基づく報告命令違反
・下請代金の支払遅延
・遅延利息の支払義務違反
・買いたたき
・購入・利用強制(車両の買取強制、車検強制、保険強制)
・不当な経済上の利益の提供要請(環境整備点検対策、開店協賛のための花輪又は生花の要請、無償での追加作業)
2024/3/19㈱Gio下請代金の不当減額 2022年1月から2023年5月まで実施
減額金額合計1526万9373円
2024/3/25ニデックテクノモータ㈱不当な経済上の利益の提供要請 金型の無償保管の事案
2022年5月1日から2024年3月7日まで実施

 上記の2023年度における下請法の勧告件数を、過去5年間(2018年度〔平成30年度〕から2022年度〔令和4年度〕まで)の勧告件数と比較しますと、以下のグラフのとおり、過去5年間の勧告件数の平均は5.6件/年、一番多い年度でも7件/年に留まっておりますので、2023年度は公正取引委員会による下請法の勧告件数は大きく増えたと評価することができます。

(出典:公正取引委員会「令和4年度 年次報告」)

 加えて、特筆すべき点としましては、2023年度の勧告事案12件のうち11件が年度の後半に勧告が行われている状況が見られるということです。特に、2024年2月には3件、同年3月には4件の勧告が行われており、(その時々の案件状況等が影響しているとは思われるものの)一般的な傾向として、公正取引委員会が下請法の執行を徐々に活発化させていっているとも評価し得るところでございます。また、この点との関係で言いますと、公正取引委員会は、2023年度において、「中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り強化」のための予算を前年度よりも増額させると共に、中小下請取引適正化に向けた体制の強化のための人員を増員させる等の執行体制の強化を行っておりましたので、2023年度における勧告事案の件数はこのような執行体制の強化と軌を一にしたものと考えられるところでございます。

 なお、公正取引委員会は、今年度においても、昨年度同様、「中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り強化」のための予算を増額させておりますので、下請法に関しては、今年度も昨年度と同様の活発な執行が行われることが予測される状況にあるということができます。そのため、下請法に関しては、各社の皆様において日頃よりご留意されていると思われますが、上記のようにリスクが高まっているという状況をご認識いただくと共に、改めて下請法コンプライアンスについて遺漏がないかをご確認いただくのが望ましいところかと存じます。

(文責:曽根裕貴)

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