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AI関係施策に関する最新動向とアウトルック

2025/12/26

AI関係施策に関する最新動向とアウトルック

 さて、本年8月のAI法施行も踏まえ、政府では、本年度末に向けてAI関連の施策の検討が積極的に進められています。本稿では、事業者に影響があり注意を要する動向を中心に、その概要と展望を概観することとします。

1 AI法に基づく人工知能基本計画及び人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針の策定

 第1に、政府は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(以下「AI法」といいます。)13条及び18条に基づき、本年12月23日に、閣議にて人工知能基本計画本年12月19日には、人工知能戦略本部にて、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」を決定しました。
 民間事業者においては、AI法6条及び7条は、AIの研究開発期間と活用事業者に、国、地方公共団体が実施する施策への協力義務を定めていますが、上記指針の「2」においては、AI関連技術の研究開発及び活用の適正な実施を図るために、研究開発機関及び活用事業者が特に取り組むべき事項として、以下の5点を明記しています。

① AIガバナンスによる俯瞰的な適正性の確保
② ステークホルダーとの信頼関係の構築に向けた透明性の確保
③ 十分な安全性の確保
④ 事業継続性確保による安全な環境の維持
⑤ AIのイノベーションの基盤となるデータの重要性を踏まえたステークホルダーへの配慮

 
 このうち、①においては、AIの設計・開発・提供・実装等のライフサイクル全体で、リスクの特定・評価・対処をするための組織的なプロセス(経営層の関与したモニタリングや評価の仕組み、 情報の適切な開示、教育・研修の実施等)を含むAIガバナンスを構築することが求められていますので、留意が必要です。

2 AIガバナンス検討会における「AI事業者ガイドライン」の更新に向けた議論

 第2に、総務省の設置するAIガバナンス検討会は、2025年9月以降「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」更新に向けた議論を行っていますが、12月2日に開催された会合では、その改正の方向性が明らかとされました。「AI事業者ガイドライン」は、総務省及び経済産業省において、AIを開発、利活用する関係者による自主的な取組を促し、非拘束的なソフトローによって目的達成に導くというゴールベースの考え方に基づき、従来の各種ガイドラインを統合・見直しして制定されたガイドラインであり、事業者が、AI開発・提供・利用にあたって必要な取組についての基本的な考え方を示しています。
 今般の改正では、以下の3点を中心に改正を進める方向で議論がされています。

 

① 新たに重要性を増している、AIエージェント(特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム)、及び、フィジカルAI(ソフトウェア的知能(AIアルゴリズム)とハードウェア的実体(センサー、アクチュエータ、エッジデバイス等)を統合し、物理世界における知的認識・判断・行動を自律的に実現するAIシステム)について、これらの便益、リスクとリスクに対して求められる対策を明記する。
② 従来、AIの利活用のリスク評価の手法が明記されていなかったことから、このリスク評価の手法と、特に留意すべきユースケースの記載を追加する。
③ AI事業者ガイドラインの利活用が十分に進んでいないことから、AI事業者ガイドラインの利活用を進めるため、「活用ガイド」の作成等の諸施策を進める。

 AI事業者ガイドラインの改正は、本年度中に行われることが予定されていますので、引き続き動向には注視が必要です。

3 AI時代の知的財産権検討会における「AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル型コード(仮称)(案)」の議論

 第3に、知的財産戦略本部の設置するAI時代の知的財産権検討会は、2025年10月以降、適切な財産の保護と活用につながる透明性の確保のあり方として、任意のガイドラインによる取組を推進する可能性について検討を行っていますが、本年12月12日に開催された会合においては、「AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル型コード(仮称)(案)」が議論されています。
 これは、コンプライ・オア・エクスプレインの考え方に基づき、AI事業者(AI開発者及びAI提供者をいう。)が行うべき透明性の確保や知的財産権保護のための措置の原則を明記しようとするものです。この原則の内容として議論されている内容は、概要、以下のとおりです。

原則1 
AI事業者は、自らの管理及び運用するコーポレートサイトにおいて、透明性確保のための措置及び知的財産権保護のための措置の概要を開示し、利用者及び 権利者を含めたすべての者が閲覧可能な状態にする。

原則2 
自らの権利又は法律上保護される利益の実現のために訴訟提起その他の法的手続を現に行い又は法的手続の準備をしている者から、上記開示対象事項について詳細の開示の求めがあった場合においては、一定の場合に、AI事業者は、当該要求に係る開示対象事項の詳細及び要求に対するAI事業者としての意見を開示する。

原則3 
一定の場合に、特定のURLのドメインがAI事業者の提供するAIシステム又はAIサービスの学習対象に含まれているか否かに関する開示の求めがあった場合には、AI事業者は、当該要求に係る事項の詳細及び要求に対するAI事業者としての意見を開示する。

 
 これらの内容やこの原則の実効性確保の方法等については、さらなる検討が必要と考えられますが、制定された場合にAI事業者の実務に与える影響は大きくなることが想定されます。

4 AI利活用における民事責任の在り方に関する研究会におけるAI関連の想定事例における民事責任の検討

 第4に、経済産業省の設置する「AI利活用における民事責任の在り方に関する研究会」は、2025年8月以降、AIを用いたサービスやシステムが事故に寄与した仮想事例を題材に、不法行為法及び製造物責任法の観点から解釈適用上の論点及び考え方の整理について議論を行っています。この整理は、AIサービス、システムが関与した事故が発生したときの責任論について予測可能性を高め、被害者や企業担当者、裁判官等の関係者に対し論点の所在及び考え方の指針を提供することで、迅速な事故処理や被害回復に資することを目的とするとされています。本年12月3日までの3回の研究会では、以下の6つの想定事例について検討、議論がされています。

① 判断補助AI(通常業務)
② 判断補助AI(専門業務)
③ 画像生成AI
④ 画像生成AI
⑤ 取引審査AI
⑥ 自動走行ロボット(AMR)

 
 とりわけ自律的な判断・制御を行うAIによって引き起こされた事故において、関係者にいかなる民事責任が発生するかという新たな論点について、いかなる整理がなされるのかは、今後のAIの開発・利活用の実務にも影響を与えることが想定されます。

 今後、年度末に向けて上記検討が本格化してくるものと予想されますので、関係事業者においては、その動向に留意が必要です。

(文責:近内京太)

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