6月19日、石川県能登半島の珠洲市で最大震度6弱の地震が発生し、珠洲市にある春日神社では、この地震の揺れで、神社にある石の鳥居が根元から折れ、崩れ、境内の石灯籠が倒れたほか、階段の一部が崩れるなどの被害が出ているということです。また、珠洲市の病院には複数のけが人が来院し、治療などの対応にあたっているとの報道がありました。被災された皆様にはお見舞いを申し上げます。
このことで、2007年(平成19年)3月25日に石川県輪島市西南西沖40kmの日本海で発生した、マグニチュード(M)6.9(気象庁暫定値)の地震(能登半島地震)のことを思い出しました。
(概要)
・平成19年3月25日9時41分、能登半島沖の深さ11kmでマグニチュード6.9の地震が発生し、石川県七尾市、輪島市、穴水町で震度6強を観測した。
・この地震により、死者1名、負傷者336名、住家全壊609棟、住家半壊1,368棟、住家一部破損12,326棟の被害が発生した。
土砂災害は、天然ダム3件、地すべり10件、がけ崩れ51件が発生した。能登有料道路の被害も甚大で、能登半島では、風評被害とも相俟って観光面に大きな打撃を生じた。
このとき「石川県方式」とも呼べる新たな支援の枠組みがなされました。従来、被災中小企業への支援は、政府系金融機関からの融資に対する利子補給しかありませんでしたが、県が国と交渉した結果、被災した中小企業者の施設・設備への補助をはじめとする、様々なハード、ソフト事業を実施できることとなったのです。この基金事業による支援により、商店街で商売をやめた人はいないといわれるなど、大きな効果があったとされていました。いわゆる「主要産業は守る」とされたものです。基本的な考え方としては、主要産業である①輪島塗、②酒造業、③商店街(観光)については、被災中小企業復興支援基金を活用し、300億円のファンドを活用して思い切った支援を行うとしたものです。なお、これ以外の業種・産業についても、販路開拓などの中小企業の意欲ある取り組みに対する支援や、風評被害の払拭、石川県への誘客促進を図るための事業への支援を行うとされていました。
・・・ただ、それでも支援が届かない工場や店舗などもあり、地元の商工会ではそれらの事業者を対象に「特別融資制度」を立ち上げ、金利の安い融資で、工場や店舗を修復して事業を再開させましょうと声をかけていました。私は、その特別融資制度がどの程度の利用率なのか、知りたくて商工会を訪ねました。商工会に行きますと、施設内にはブースが用意されていて、そこでは相談をしている事業者がいました。そこで、私は商工会の担当者に特別融資制度の利用者はどのくらいいるのか尋ねました。
そうしたところ担当者からは、意外にも「特別融資制度」は殆ど利用されていないという回答でした。「え、でもあそこに相談をされている方々がいらっしゃるじゃないですか。」と問い直すと、「いえ、彼らは、「廃業届」の書き方を教えて欲しいと来ている方々なのです。」と言われました。・・・ショックでした。これは地域の特性なのかも知れませんし、事業者の高齢化と事業承継の予定がないことが合わせ重なったことが原因なのかも知れません。しかし、確かに現実でした。「(この年齢で)融資を受けて、工場を直し、店舗を元通りに戻しても、あと何年商売ができるか分からない。そうであれば、こんな被災をしたのだから、この際だから、事業は終わりにしよう」という気持ちになっていたのです。被災が事業を終える契機となってしまった残念な事例です。
このようなことは皆さんの会社では起こることはないでしょう。しかし、みなさんの事業に協力をしている下請け事業者や、特に個人的な技術を持つ職人的な方々においては、そのような事業を終えようと考える機運になりうることがあります。それは皆さんの事業にとってもマイナスの影響です。そのようなことにならないよう、サプライチェーン全体の事業継続をマネジメントしてゆきましょう。