企業のBCPの策定を推進することを目的として設立された「事業継続推進機構」(BCAO)では、標準テキスト(第11版)で「BCAOが目指すこれからの企業の事業継続」という項目で「レジリエンス」を掲げています。これまでの事業継続の考え方は「従来の防災」の考え方に加え「重要業務を継続・早期開始という観点」と「サプライチェーンでの対策・対応」を加えるというものでしたが、これに加えて「経営理念に基づき、変化する経営環境に対して適応する能力(レジリエンス)」を加えて、これらを網羅すべきと指摘しています。

そこで、企業組織のレジリエンスを高める方法について検討してみます。
①ダイバーシティを推進する
まずは「ダイバーシティの推進」が重要と思います。企業内で、特に意思決定を行う場面に多様な人材がしっかりと参加できる環境を整えることは、企業におけるこれまでの固定観念が払拭され、事業環境・経営環境の急激な変化に耐え得る組織の構築への契機になると思います。「ダイバーシティを推進することで、発想の源泉を豊かにすることができます。」との意見も聞かれます。
②従業員のレジリエンスを高める
企業のレジリエンスを高めるために、従業員のレジリエンスを高めることも重要と言われています。従業員のレジリエンスを高めるためには、どうしましょうか。この点、従業員・役員のコミュニティーを充実させ、組織に対する愛着心(エンゲージメント)を高めることが提言されています。エンゲージメントは「愛社精神」とほとんど同様の意味として使われていますが、エンゲージメントを高く維持すると、従業員の職場定着につながり、離職率が低くなることと併せて、単に会社で給料をもらう、という姿勢ではなく、「貢献」を期待することもできるようになるでしょう。ただ、何となくではそのようなエンゲージメントは高まらないでしょう。特に災害時などでは、通常業務と全く異なる業務(やるべきこと)が発生します。ストレスも溜まります。そのような中でも従業員として会社業務を遂行する気持ちになるための仕組みや、工夫が必要です。それは従業員ケアです。阪神淡路大震災(平成7年)、東日本大震災(平成23年)、熊本地震(平成28年)などで被災した企業は、従業員のケアを重視していました。当座の生活に支障が無いようにと特別給付金として5万円程度ですが、支給している企業がありました。特に熊本地震は、新入社員であれば初任給をもらう前の被災です。企業のみなさんはそのような社員の存在に気付き、声を掛け、実際に支援をされていました。そのような企業からの働きかけが災害時にエンゲージメントを高める重要な要素となります。
③リーダーを育成する
やはり、企業のレジリエンスを高めるためには、そのためのリーダーの存在が不可欠でしょう。リーダーの資質がその企業のレジリエンスを決定づけると言っても言いすぎではありません。災害時や今般のコロナ禍において企業の取組が平常時であれば当たり前のようにできることが「できない事態」を迎えて、それにどのように対応するか、先導するか、この点はリーダーの先見力、判断力に大きく左右されるものと思います。しっかりと発進力をもったリーダーが、「この方針で行こう。みんなで頑張ろう」と言って、従業員や協力会社、取引先に声をかけることがこれまでの災害時の企業活動で大きな原動力となったことは明らかです。リスクに対応できる組織と、その組織で先頭に立つ、リーダーの存在。欠かせないものと考えます。
・・・やや雑ぱくな感じがしますが、要するに、リスク発生時においても事業を継続するためには、レジリエンスな企業を作るということであり、そのためにはやっぱり人材なのですね、ということです。そのための社員教育・役員研修などで「被災時の企業の取り組み~早期復旧への工夫と実践~」などを講義させて頂いていますが、その際の質疑応答で出る言葉「うち(当社)でできるかな?」・・・消極的な言葉に聞こえるかも知れませんが、私は「大丈夫です。お手伝いします。(笑)」と返します。このような気付きをもってもらうこと、事例をみて自社に置き換える作業をすることがとても重要なことであり、そこまでたどり着けば、あとは、方法論だけになります。だから、役員の皆さんにはぜひ、そこまでたどり着いて頂きたいと思っています。ぜひ!