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コーポレート法の小窓

2023/12/27

コーポレート法の小窓

 ご承知の方も多いかと思いますが、金融庁(証券取引等監視委員会)はインサイダー取引規制に関するQ&A(以下「インサイダーQA」といいます。)を公表しております。当該インサイダーQAについて、令和5年12月8日、従前の内容に「応用編(問6~8)」が追加されました。追加された質問は以下のとおりです。


応用編(問6)
 上場会社の役職員等が、自社や取引先の株式を売買するための契約を結び又は計画を策定した後に重要事実を知った場合、当該契約・計画を中止することはインサイダー取引規制との関係で問題がありますか。

応用編(問7)
 上場会社において、役職員等に対する株式報酬として新株発行又は自己株式処分を行うことが内部的に決定されました。払込金額の総額は割当決議日までに変更される可能性がありますが、当該内部的な決定が行われた時点においては、その時点における株式報酬の総額の見込み額を所定の方法で公表することにより「公表」がされたことになるのでしょうか。

応用編(問8)
 上場会社が、役職員等に対して、その職務執行の対価として一定期間の譲渡 制限が付された現物株式を自己株式の処分の方法により付与する場合、インサイダー取引規制との関係で問題がありますか。


 インサイダーQAは、適切な投資まで抑制すべきではないという観点から、インサイダー取引規制上問題のない行為の紹介も行っており、今回追加された3問のいずれについても、最近起こり得る各事象を取り上げた上で、基本的にはインサイダー取引規制に抵触するものではないことを明確にしているものです。役員の方々等へのご説明が必要な場合には、活用をご検討いただいても良いかと思います。
 なお、よりインサイダー取引規制に抵触するとの疑義を持たれないようにするとの観点からは、以下のような措置を講じておくことが望ましいと解されますので、ご参考にしていただければと思います。

✓ 問6について、重要事実を知る前から契約の締結・計画の作成がなされていたことを明確にできるような資料の整備
(例えば、契約の締結日・作成日が明確に分かるような資料を残す)

✓ 問7について、株式報酬の総額の見込み額について重要な変更があった場合に、当該重要な変更を知る前の取引であることが明確に出来るような資料の整備
(例えば、株式報酬の総額の見込額について重要な変更があった日が明確に分かるような資料を残す)

✓ 問8について、自己株式の付与時点において重要事実が存在したとしても、付与と重要事実とが無関係であることの資料の整備
(例えば、具体的な譲渡制限株式株式数の決定時点において未公表の事実が存在する場合には、裁量的に付与数を増減していないことが分かるような資料を残す)

 インサイダーQAとは別に、金融庁(証券取引等監視委員会)は毎年6月「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」(以下「事例集」といいます。)を公表しています。事例集においては、近時のインサイダー取引に関する課徴金勧告事案・特色等の紹介がなされている他、「監視委員会コラム」も掲載されています。例えば、

・ インサイダー取引の違反行為者のその後の状況
・ 重要事実等の決定・発生から公表までの平均日数

など、興味深いコラムも記載されており、社内啓発の材料を探されているご担当者におかれましては参考にされてはいかがかと思います。 なお、当該コラムでは、インサイダー情報の伝達等が行われやすい場面として「会食」の割合が最も多くなっていることも紹介されております。忘年会シーズンは終わりを迎えつつあると思いますが、新年会が控えている方もいらっしゃると思います。口を滑らかにするお酒の効能は素晴らしいものですが、滑りすぎないようお気をつけください。

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