2026年は、企業のリスク管理のあり方を大きく変える転換点の年となります。2026年の一連の法改正は、単なる制度変更にとどまらず、企業に対して「どこまで人を守るのか」という根本的な問いを突きつけています。従来、多くの企業においてBCP(事業継続計画)は、「災害時に事業を止めないための計画」として位置付けられてきました。しかし、2026年の法改正を踏まえると、この理解はもはや十分とは言えません。これからのBCPは、「人を守れなければ企業責任を問われる」という前提で再構築する必要があります。
今回の改正で最も象徴的なのは、労働安全衛生法の見直しです。これにより、従来の「従業員」に加え、フリーランスや外部人材も含めた安全配慮が求められる方向性が明確になりました。また、カスタマーハラスメント対策の義務化により、顧客対応の現場においても、企業は従業員を保護するための具体的措置を講じなければならなくなります。すなわち、企業はもはや「雇用関係にある人だけ守ればよい」という考え方では許されません。自社に関わるすべての人の安全と尊厳をどこまで確保できているかが、法的にも社会的にも問われる時代に入ったのです。
さらに重要なのは、企業責任の及ぶ範囲が拡大している点です。例えば、外部業者に業務を委託している場合であっても、発注者として安全配慮に関与すべき場面が増えています。また、サイバー対策や内部通報制度の整備も、単なる努力義務ではなく、実効性が厳しく問われる領域へと変化しています。
これらに共通するのは、「知らなかった」「外部に委託していた」という説明で自社の責任を逃れようとすることができなくなっているということです。企業は、自らの関与の程度に応じて、合理的な管理・監督体制を構築しているかどうかを問われます。
こうした環境変化の中で、従来型のBCPは明らかに限界を迎えています。従来のBCPは、災害発生時の初動対応や事業復旧に重点が置かれていました。しかし、これからはそれだけでは十分ではありません。これからのBCPに求められるのは、次の3点です。
第一に、「誰を守るのか」を明確にすること。
従業員に加え、派遣社員、委託先、顧客など、関係者全体を視野に入れた設計が必要です。
第二に、「どこまで守るのか」を具体化すること。
避難対応、情報提供、心理的安全の確保など、抽象的な理念ではなく、実行可能な措置として落とし込む必要があります。
第三に、「誰が判断するのか」を明確にすること。
災害時には即断が求められます。判断基準と権限分配が曖昧であれば、結果として責任問題に直結します。
2026年の法改正が示しているのは、BCPを「事業継続のための計画」から、「企業の社会的責任を果たすための基盤」へと転換せよ、というメッセージです。
言い換えれば、BCPは経営そのものの問題となったということです。
平時において、どこまでリスクを想定し、どの程度の備えを講じているか、その積み重ねが、有事の対応だけでなく、企業価値や信頼の維持に直結します。
今一度、自社のBCPを見直してみてください。その計画は、本当に「人を守れる内容」になっているでしょうか。形式的な整備にとどまっていないでしょうか。
2026年は、BCPの実効性が厳しく問われる年です。
「そのBCPでは守れない」と他から言われる前に、今こそ見直しの一歩を自ら踏み出すことが求められています。
(弁護士 企業防災ガバナンス・アドバイザー 中野 明安)
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