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長島 亘成瀬 健太郎木村 一輝松本 伸也

企業価値担保権制度がはじまります。

2026/04/30

企業価値担保権制度がはじまります。

 令和8年(2026年)5月25日に事業性融資の推進等に関する法律(以下、本記事において「法」といいます。)が施行されます。抵当権をはじめとした不動産担保等に比べると利用場面は多くないと思われますものの、取引先が利用している場面や、M&Aやプロジェクトファイナンスにおいて利用を検討する場面はあり得ると思われます。そのため、詳細まではともかく、どのようなものかについて知っておくことは有益と存じますので、今回ご紹介させていただきます。

1 企業価値担保権設定に関わる当事者

 上図のとおり、企業価値担保権の設定は、債務者を委託者とし、担保権者(免許を受けた者に限定)を受託者として、両者間で締結される信託契約(企業価値担保権信託契約。法6条3項)による必要があります。
 上記図のうち、特定被担保債権者は与信者(貸し手)であり、担保権が実行された場合には優先弁済を受けることが出来る者です。他方、不特定被担保債権者は一般債権者を想定しています。企業価値担保権は、債務者の総財産を担保目的財産としますので、企業価値担保権が実行されて、特定被担保債権者が換価代金全額を優先回収してしまうと、その後の清算手続や破産手続の費用がなくなってしまいます。そのため、企業価値担保権を実行しても一定額を優先弁済に回さずに留保することが義務付けられています(法8条2項1号ハ)。上図において一般債権者(不特定被担保債権)も受益権を有する形になっているのは、上記一定額を留保するための仕組みです。

2 債務者による事業活動(担保目的物の使用・処分)

 債務者は、企業価値担保権設定後も、担保目的財産の使用、収益及び処分をすることが可能です(法20条1項)。もっとも、定款の目的及び取引上の社会通念に照らして通常の事業活動の範囲を超える担保目的財産の使用、収益及び処分をするには、企業価値担保権者の同意が必要になります(法20条2項)。
 

3 個別の財産に対する強制執行との関係

 企業価値担保権者は、他の債権者・担保権者が担保目的物に対して強制執行等が行った場合(例えば債務者の不動産に対して、一般債権者が強制執行を行った場合や、抵当権者が抵当権を実行した場合)であっても、配当又は弁済金の交付を受けることが出来ません(法7条3項)。一方で、企業価値担保権者は、上記の強制執行等が債務者の事業の継続に支障を来す場合には、異議を主張することが出来るとすることによりバランスを取っています(法19条1項)。

4 個人保証等の制限

 特定被担保債権に係る債務については、原則として個人保証や個人財産(生活の用に供する物)に対する担保権に係る権利行使を制限されます(法12条)。例外的に、債務者が契約上の義務に反して虚偽の財産状況を報告したような場合などは、権利行使が可能となります。

5 企業価値担保権の実行

 債務者において特定被担保債権の弁済ができない場合、企業価値担保権者の申立によって裁判所の決定により企業価値担保権の実行手続が開始され、管財人が選任されます。管財人は、原則として事業の経営等を実施しながらスポンサーに事業譲渡を行います。事業譲渡代金は、企業価値担保権者に配当され、さらに企業価値担保権者から受益者である特定被担保債権者に対して給付されることで、特定被担保債権者は優先弁済を受けることとなります。

以上

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