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アセス法(環境影響評価法)改正の概要

2025/07/31

アセス法(環境影響評価法)改正の概要

1 環境影響評価法の概要

 今回は、先月公布された環境影響評価法(いわゆるアセス法)改正法の概要についてご紹介します。
 同法は、一定規模以上の発電所等の事業を実施する事業者に対し、その実施が環境に及ぼす影響を自ら事前に調査・予測し、評価を行うとともに、その情報を公表することなどを義務付けている法律です。
 1997年の制定後、2011年の改正を経て、10年超ぶりの実質改正となるのが今回の改正です(審議経過概要は参考➌のとおりです)。
 今回の主な改正内容は2点ですが、関連して中央環境審議会の答申の内容もあわせてご紹介します。

改正内容①建替事業を対象としたアセス手続の見直し

 主な改正内容1点目は、建替事業を対象としたアセス手続の見直し(改正後アセス法3条の3第2項)です。
 アセス法の制定から四半世紀以上が経過し、手続対象となる工作物も建替えの時期を迎える事業が生じているものの、改正前は建替えに関する規定がなかったため、新規事業と同様に事業位置の検討や周辺環境の調査が課されていました。このため改正法は、合理化の観点で、建替事業(既存工作物を除却又は廃止し、同種の工作物を同一又は近接区域内に新設する事業)については、周辺の概況などの調査を不要とし、これに代えて、既存事業の事後調査等の実施結果を踏まえ、建替事業における環境配慮の内容を記載した、いわゆる建替配慮書」を作成・公表することとしました(下記参考❶及び参考❷内の①建替配慮書部分ご参照)。

■参考❶ 建替事業に適用される手続(出典:環境省HP
■参考❷ 建替配慮書の位置付けと手続のイメージ
(出典:環境省HP

改正内容②アセス図書の継続公開

 2点目は、アセス図書の継続公開(52条)です。
 アセス法に基づいて事業者が作成した配慮書、評価書、報告書などの図書(アセス図書)については、事業者に公表義務が課されていますが、その期間は概ね1か月程度に限られているため、後続事業者における効果的なアセスの実施や近傍の複数の事業による累積的な環境影響の評価に、既存のアセス図書の情報を十分に活用できないという指摘がありました。当該指摘を踏まえ、その有効活用ができるよう、環境大臣がアセス図書を入手した上で、事業者による公表期間経過後もインターネットにより継続公開できることが定められました(上記参考❷内の②)。

2 施行日

 改正法は本年6月に公布され、既に一部施行済みですが、1点目の改正については公布から2年を超えない範囲で政令で定める日に、2点目については公布から1年を超えない範囲で政令で定める日に、それぞれ施行される予定です。

3 中央環境審議会の答申について

 アセス法自体の改正は主に上記2点のみですが、そもそも本改正は、環境大臣からの諮問を受けて中央環境審議会がとりまとめた答申を踏まえて行われたものであるところ、当該答申においては上記以外にも例えば、配慮書における適切な複数案の考え方についての検討や関係法令等の整備、陸上風力発電事業の立地誘導、陸上風力発電事業を対象とした第二種事業の規模要件引き下げ、複数の事業による累積的な環境影響の評価に関する技術的な考え方・責任分担に関する検討など、様々な指摘がなされているところです。

 今後は、今般の改正アセス法を受けた下位法令の整備とあわせて、これらの点についても検討・対応が進んでいくものと思われますので、今後、引き続きその動きが注目されるところです。

審 議 経 過 概 要
20239月  環境大臣から中央環境審議会に対し「風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について」諮問(①)
20243月  上記①についての一次答申
10月 環境大臣から中央環境審議会に対し「今後の環境影響評価制度の在り方について」諮問(②)
11月~ 全体検討のため、環境影響評価制度小委員会・風力発電に係る環境影響評価の在り方に関する小委員会を同時開催
12月 答申(案)の公表・パブリックコメント
20253月 上記①についての二次答申及び上記②についての答申    
   アセス法改正案の閣議決定
6月 法案可決(13日)・公布(20日)
■参考➌ 審議経過概要


(文責:神代優)

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