立体商標について、商標法3条1項3号の該当性を肯定した事案
今回は、立体商標について、①商標法3条1項3号に該当するか、②3号に該当するとしても、使用により識別力を獲得し、商標法3条2項の要件を具備しているかが問題となった裁判例2件をご紹介します。
【フォークに関する立体商標】
(知財高裁令和8年6月10日判決)

【住宅の基礎コンクリート・水切りの部分からなる立体商標】
(知財高裁令和8年2月26日判決)

商標法3条1項3号該当性の判断基準
立体商標は、広告用のキャラクター人形や、商品の容器、商品の形態など、立体的形状から構成される商標です。従前、商標法は、登録を受けることができる商標を平面的なものに限定していましたが、平成8年改正において、立体商標制度が導入されました。
この制度の導入後、商品やその包装の形状が立体商標として出願されるなどしましたが、商品等の形状は、多くの場合、期待される機能をより効果的に発揮させたり、美観をより優れたものにするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられることが少ないため、商標法3条1項3号は、指定商品・その包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章は、商標登録を受けることができないと定めています。
裁判例において、事案に応じて判断基準の示し方に若干の違いはあるものの、当該趣旨から、
⑴ 客観的にみて、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる形状
⑵ 機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲の形状
⑶ 需要者において予測し得ないような斬新な形状であるが、専ら商品等の機能向上の観点から選択された形状
であれば、商標法3条1項3号に該当し、商標登録を受けることができないという基準により3条1項3号該当性を判断しています。
まず、フォークの立体商標に関する裁判例では、
「需要者から見て、当該商品が商品に必要とされる機能や美観に資することを目的として選択されたものと把握し得る範囲のもの」であれば、商標法3条1項3号に該当するという上記⑵の判断基準を採用しました。そして、問題となったフォークの形状は、同様の特徴を持ったフォークがほかにも多数存在し販売されていたことや、商品紹介のウェブサイトや包装に、形状が「握りやすさ」、「食べやすさ」という機能に資するものであることが明示されていたことを考慮して、商標法3条1項3号に該当すると判断しました。
また、住宅の立体商標に関する裁判例でも、
「客観的に見て、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品の形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解される(※基準⑴)。また、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品について、機能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである(※基準⑵)。さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状であっても、当該形状がもっぱら商品の機能向上の観点から選択されたものであり、機能を確保するために不可欠な形状のみからなるときは、商品(役務にあっては、役務の提供の用に供する物の立体的形状等)が当然に備える特徴のうち立体的形状のみからなる商標については商標登録を受けることができない旨を規定する商標法4条1項18号、同施行令1条の2の趣旨から、同法3条1項3号に該当するとされる場合がある(※基準⑶)。」として、上記⑴から⑶の判断基準を採用しました。そして、問題となった住宅の立体商標に関して、基礎については、建物の基礎部分の機能又は美観向上のために石材を用いたり、表面を装飾することは一般的に行われていること、水切りについては、特段の特徴があるものとは認められないとして、「立体的形状は、建物の基礎部分について、機能又は美観に資することを目的として採用されたと認められるものであり、建物の基礎部分の形状として、本願商標の需要者において、機能の向上又は美観の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲のものということができるから、それを超えて、本願商標の形状の特徴をもって、役務の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。そして、これら機能又は美観に資することを目的とした立体的形状の採用について、特段の事情も認められない。」として、商標法3条1項3号に該当すると判断しました。
商標法3条2項の要件
商標法3条2項は、同条1項3号から5号に該当する商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」についての商標登録を認めています。
使用による識別力と判断されるためには、全国的に知られていることとするのが通説であり、商標法3条2項の判断について、知財高裁平成19年6月27日判時1984号3頁等は、
「商品等の立体形状よりなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である」
と判示しています。
今回の裁判例2つは、いずれも、商品が長期間にわたって販売されているものでしたが、商品の形状自体が強い自他商品の識別力を有するものではないこと等が考慮され、3条2項の要件が具備されていないと判断されました。
今回ご紹介した2件の裁判例は、いずれも商標登録が認められませんでしたが、例えば、コカコーラの瓶やヤクルトの容器、肘掛け椅子のYチェア、ゴジラのキャラクターなどが商標登録を受けた立体商標として有名です。
以上

