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CGSガイドライン改訂案が公表されました

2022/07/01

CGSガイドライン改訂案が公表されました

 5月20日に開催された第5回CGS研究会(第3期)(経済産業省)において、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」(2017年3月31日策定)の再改訂案【1】が示されました【2】

 CGSガイドラインとは、経済産業省が、我が国企業のコーポレートガバナンスの取組の深化を促す観点から、各企業において検討することが有益と考えられる事項を盛り込んで策定したものであり、特に法的な拘束力はありません。
 コーポレートガバナンス・コード(CGC)との関係については、本ガイドラインはCGCを具体化・補完等するものとして位置付けられています。すなわち、本ガイドラインは「CGCにより示された実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を企業が実践するに当たって考えるべき内容をCGCと整合性を保ちつつ示すことでこれを補完する」ものとされています。上記のとおり、本ガイドラインの遵守がただちに求められるというものではなく、各社の置かれた状況に応じて/各社のコーポレートガバナンス改革を後押しするものとして活用されることが期待されています。

 再改訂案では主に以下のような点について改訂案が示されています。

※本稿は執筆(6月24日)時点において公表されている資料(事務局作成の取りまとめ案)を参考に記載しているため、今後、議論の進行に伴い改訂内容が変更となる可能性があります。6月27日に(より確度の高い)「CGSガイドラインの改訂案」が報告書案とともにとりまとめられ公表される見込みです【3】ので、詳しくはそちらをご確認下さい。

論点主な改訂内容
取締役会の役割・機能向上  ✓ 取締役会における「監督」は執行のブレーキや不祥事を自ら発見することではなく、適切なリスクテイクや社内の経営改革の後押し、リスクテイクしないことのリスク(不作為のリスク)を提起することも含まれることを明示(2.1
✓ 社外取締役が相当数含まれる取締役会で議論する意義と留意点(2.2
モニタリング機能を重視したガバナンス体制✓ 「取締役会を監督に特化させることを志向する会社」モデル【4】と「取締役会の意思決定機能を重視しつつ取締役会内外の監督機能の強化を志向する会社」モデル【5】のそれぞれでの監督機能の強化・機関設計等(2.3
 監査等委員会設置会社へ移行する際の検討事項(取締役会の役割・機能の見直し/監査等委員会の意見陳述権と任意の指名委員会・報酬委員会の関係/監査の実効性の向上/社外監査役を社外取締役として選任する際の留意事項)(2.4、別紙1
取締役の資質・取締役会の構成の在り方✓ 社外取締役の質を担保するための取組み (取締役の個人評価【6】/スキル・マトリックス、研修等)(2.5、2.6、3、別紙2
 ファンド等の投資家株主から取締役を選任する場合の留意点(一般株主との利害の不一致/会社との利益相反/情報管理/独立性・社外性/重要な契約に関する開示)(2.6.5、別紙5
執行側の機能強化(経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備)✓ 経営陣のリーダーシップを支える仕組み(リスクテイクができ、しがらみにとらわれない社長・CEOの選任(指名の仕組み【7】)/トップマネジメントチームの組成と権限委譲/経営戦略策定等に関する委員会【8の活用/就任年齢の若返りによる(精力的に経営戦略を実現できる)期間確保/報酬等によるインセンティブ強化 等)(4、5

1】当該指針は2018年9月28日に第1回目の改訂が行われており、今回は2回目の改訂となる見込みです。
2】経済産業省HP「第5回CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)第3期」各資料参照。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/03_005.html
3】<6/30追記>最新の情報は同研究会第6回 各資料をご参照ください。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/03_006.html
4】典型的には指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社
5】典型的には監査役設置会社
6】「取締役会の実効性評価を実施する中での個人評価」との位置付け(別紙2「8」)。
また、本研究会の事務局資料(資料5)には、個人評価に関する日本企業の取組状況、実際に個人評価を実施・公表している日本企業の事例、海外での状況(英国ではCGCにより取締役個人の評価が求められている/米国では取締役個人の評価は求められていないが実態として約半数の企業が個人評価を実施)も紹介。
7】「経営陣の指名の在り方」では、社長・CEOの解任・不再任基準(※)を平時から設けておくことに関する記載(4.1.5)も追加されている。
(※)よく見られるコンプライアンス違反等の場合の解任基準(=抵触すれば基本的に解任・不再任となる定性的な基準)ではなく、「解任・不再任の要否について議論を始める契機となる基準」(例えばKPIに対応した財務的な定量基準)。
8】委員会が扱うテーマの典型例としてサスティナビリティが挙げられている。

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