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中野 明安

富士山噴火で企業は止まるのか
―東京の企業が今から見直すべきBCP

2026/07/30

富士山噴火で企業は止まるのか
―東京の企業が今から見直すべきBCP

 令和8年熊本地震で被災された皆様へ
 7月28日に発生した令和8年熊本地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。被災地域の皆様の安全が一日も早く確保され、安心して日常生活を取り戻されるとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。
 災害は「いつか起こる」のではなく、「今日起こるかもしれない」という前提で備えなければなりません。BCPは災害発生後に作るものではなく、平時から組織として判断し、行動できる体制を整えておくための経営そのものです。今回の地震を契機に、改めて自社のBCPを点検していただければ幸いです。今月号では、近年そのリスクが改めて注目されている富士山噴火への備えについて取り上げます。

 近年、政府や東京都は「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」などを相次いで公表し、富士山噴火への備えを本格化させています。
 しかし、多くの企業では「地震BCP」は整備されていても、「火山噴火BCP」まで検討している実例をあまり聞いておりません。地震は一瞬で建物を破壊する災害ですが、火山噴火は広範囲に降灰が続き、交通・物流・通信など社会インフラを長期間にわたり低下させる災害です。この違いを理解することが、企業の事業継続を考える第一歩となります。

東京では何が起こるのか

 東京に最も大きな影響を及ぼすのは「火山灰」です。風向きによっては噴火後数時間で23区に降灰が到達し、交通機関は停止し、物流も滞ります。さらに、湿った火山灰は送電設備や通信設備にも障害を与え、大規模停電や通信障害、断水を引き起こす可能性があります。従業員も交通機関の停止や健康被害によって出社できなくなり、通常業務は極めて困難になります。

企業BCPで見直すべき4つのポイント

 富士山噴火は、比較的早い段階で前兆を把握できる可能性がある災害です。そのため、「噴火後の対応」だけでなく、「噴火前に何を行うか」が極めて重要になります。企業としては、特に次の4点を検討しておく必要があります。

① 噴火警戒レベルに応じた段階的な行動基準を定めること
 富士山噴火は、大地震と異なり、火山性地震や地殻変動などの前兆が観測される可能性があります。そのため、気象庁が発表する噴火警戒レベルや臨時情報に応じて、「対策本部の設置」「出張の見合わせ」「在宅勤務への切替え」「重要拠点への人員配置」など、段階的な行動基準をあらかじめ定めておくことが重要です。「空振りを恐れて判断が遅れること」が、企業にとって最も大きなリスクとなります。
 「初動の遅れは、被害を拡大させます。」

② 停電や通信障害も想定し、代替拠点やデータバックアップを整備すること
 降灰により停電や通信障害が発生すると、在宅勤務を前提としたBCPも機能しなくなる可能性があります。そのため、重要業務については、影響の少ない地域に代替拠点を確保するとともに、クラウドや遠隔地へのデータバックアップを整備し、どの拠点からでも業務を再開できる体制を構築しておくことが求められます。
 「『テレワークがあるから安心』という発想は危険です。」

③ 防塵マスクやゴーグルなど、火山灰特有の備蓄を準備すること
 火山灰は細かなガラス質の粒子であり、吸い込むと呼吸器に、目に入ると角膜に障害を生じるおそれがあります。そのため、水や食料など通常の災害備蓄に加え、N95規格以上の防塵マスク、防塵ゴーグル、養生テープ、ブルーシート、精密機器の保護カバーなど、火山灰災害に特有の資機材を備蓄しておくことが重要です。
 「火山灰対策は、地震対策の延長ではありません。」

④ サプライチェーンを多重化し、「○日後」ではなく「復旧条件」を基準とした事業再開計画を策定すること
 富士山噴火では、自社の建物に被害がなくても、物流網や仕入先の機能停止によって事業が継続できなくなることがあります。そのため、調達先や物流ルートを複数確保するとともに、「発災後○日で再開する」といった時間基準ではなく、「電力・通信が復旧し、従業員の一定割合が出社可能となった場合」など、客観的な復旧条件を基準として事業再開を判断する仕組みを整備しておくことが実効性の高いBCPにつながります。
 「復旧の鍵は、『いつ再開するか』ではなく、『何が整えば再開するか』を決めておくことです。」

噴火災害における最大のリスクとは

 噴火災害については「空振りを恐れて動かない」ことこそが最大のリスクとなります。富士山噴火は、建物が無事であっても企業活動が停止する典型的な災害です。そのため、従来の地震中心のBCPだけでは十分とはいえません。重要なのは、計画書を作成することではなく、経営層を含めた机上訓練やシミュレーションを繰り返し実施し、「その日、本当に判断できる組織」を作ることです。BCPとは文書ではなく、企業の「組織対応力(レジリエンス)」そのものだからです。

※貴社のBCPの取組について無料相談を致します(1回30分)。
 事務所あるいは中野までメールにてお問い合わせください。

(弁護士 企業防災ガバナンス・アドバイザー 中野 明安)

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