ちょっと早いんじゃないの?との声があるかも知れませんが
6月下旬の発行というタイミングで「熱中症」を取り上げるのは、やや早いと感じられるかもしれません。しかし、夏前の「暑熱順化期間」を設けることは、人的リスク低減策として非常に重要です。企業の事業継続計画(BCP)の観点からは、むしろ今こそ準備を始めるのが適切な時期なのです。
花粉症と熱中症、BCP対策のトピックです。
近年、花粉症が業務に与える影響については広く認識されるようになりました。くしゃみや鼻水、集中力の低下などにより、生産性が著しく低下することは、多くの企業が実感しているところでしょう。そのため、花粉症対策として空気清浄機の導入や在宅勤務の活用など、一定の対策を講じている企業も少なくありません。
一方で、熱中症については「屋外作業者の問題」「個人の体調管理の問題」として矮小化されがちです。しかし、この認識は見直す必要があります。熱中症は重篤化すれば命に関わるだけでなく、発症した従業員の離脱により、業務の継続に直接的な影響を及ぼします。特に夏季のピーク時には複数の従業員が同時に体調を崩す可能性があり、これはまさにBCP上の「人的リソースの毀損」に該当します。
企業の熱中症対策はBCのための必要投資です。
さらに見落とされがちなのは、熱中症対策に要する時間とコストです。空調設備の強化、作業時間の短縮、休憩時間の増加、水分・塩分補給のための備品整備、さらには健康管理体制の強化など、企業が負担すべき対応は多岐にわたります。これらは単なる福利厚生ではなく、事業継続のための必要投資と位置付けるべきものです。
実務的に見ると、熱中症対策は花粉症対策と同様、あるいはそれ以上に企業活動に影響を及ぼします。花粉症が「慢性的な生産性低下」をもたらすのに対し、熱中症は「急激かつ集中的な人的損失」を引き起こす点で、よりBCP的なリスクといえます。したがって、両者は性質こそ異なりますが、企業にとっての重要性はほぼ同等と評価すべきです。
熱中症対策と安全配慮義務
~その具体的な取組を確認しましょう~
また、法的観点からも無視できません。企業には従業員の生命・身体の安全を確保する義務、いわゆる安全配慮義務が課されています。近時の裁判例の傾向を踏まえると、猛暑が常態化している現代において、適切な熱中症対策を講じないことは、予見可能性および結果回避義務の観点から問題視される可能性が高まっています。
したがって、BCPの見直しにあたっては、地震や風水害といった突発的災害だけでなく、熱中症のような「季節性かつ反復的なリスク」を明確に位置付ける必要があります。具体的には、気温上昇時の業務継続基準の設定、勤務形態の柔軟化、緊急時の医療対応体制の整備などを、あらかじめ計画に組み込んでおくことが望まれます。
熱中症は、決して「夏の風物詩」ではありません。企業活動を左右する現実的な経営リスクです。今から準備を始めることが、従業員の安全確保と事業継続の両立につながります。本格的な猛暑が到来する前に、貴社のBCPを改めて点検されることを強くお勧めいたします。
※貴社のBCPの取組について無料相談を致します(1回30分)。
事務所あるいは中野までメールにてお問い合わせください。
(弁護士 企業防災ガバナンス・アドバイザー 中野 明安)

