2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする大規模な地震が発生し、熊本県内では最大震度7を観測しました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
今回の地震では、建物やライフラインへの被害だけでなく、自動車、半導体、小売、物流など幅広い企業活動にも影響が生じました。発災から間もない現時点では復旧の途上にある企業も少なくありませんが、既に明らかになった事例から、BCPについて考えるべき重要な教訓が見えてきます。
工場が無事でも生産は止まる
今回の地震では、熊本・九州に生産拠点を置く自動車・半導体関連企業で、相次いで操業停止や生産調整が行われました。トヨタ自動車は九州の複数工場の操業を停止し、ホンダも熊本製作所の操業を停止しました。また、半導体関連企業でも、設備の点検や安全確認などのため生産を停止する動きが生じました。
注目すべきは、自社工場そのものに致命的な損傷がなくても、従業員の安全確認、設備点検、部品供給、物流、道路事情などの影響によって事業を継続できなくなることです。
BCPでは「自社の建物が使用できるか」だけを考えていては不十分です。電気、水道、通信、交通、物流、取引先など、事業を支える外部資源のどれか一つが失われても事業は止まり得る、という視点が必要です。
「安全確認」を復旧プロセスに組み込む
発災後、企業に求められるのは、できるだけ早く操業を再開することだけではありません。まず従業員や来訪者の安全を確保し、建物や設備に危険がないことを確認したうえで復旧に移る必要があります。
例えば、小売店舗では臨時休業して店内の安全点検を実施し、安全が確認できた後に営業を再開する対応がとられています。 熊本市電も発災当日は全線で運行を停止し、安全確認を経て翌日の始発から運行を再開しました。
「いつ再開するか」だけではなく、「誰が、何を確認し、どのような条件が整えば再開を決定するのか」を平時から決めておくことが重要です。復旧を急ぐあまり安全確認が不十分になれば、二次災害を招きかねません。BCPには、停止の基準とともに「再開の基準」も必要なのです。
サプライチェーンと物流を「見える化」する
今回の地震では、道路や鉄道などの交通インフラへの影響から、配送の停止や遅延も生じました。実際、熊本県向けの配送を停止したり、九州地方への配送遅延を案内した企業もあります。
製造業であれば部品や原材料が届かなければ生産できません。小売業であれば商品が届かなければ営業を続けることができません。
重要なのは、主要取引先だけでなく、その先の二次、三次の取引先まで含めて「どこが止まれば自社が止まるのか」を把握することです。調達先の複数化、代替輸送手段、一定量の在庫確保などについて、平時から検討しておく必要があります。
BCPの目的は「一日も早く元に戻す」ことだけではない
災害後の事業継続というと、「いかに早く通常営業に戻すか」に目が向きがちです。しかし、本来のBCPの目的は、すべてを直ちに元に戻すことではありません。
限られた人員、設備、電力、物流の中で、何を最優先で継続・復旧させるのかを判断することこそBCPの核心です。そのためには、重要業務をあらかじめ特定し、「何時間、何日までなら停止を許容できるか」を考えておかなければなりません。
令和8年熊本地震は、BCPが単なる「災害時のマニュアル」ではなく、事業を構成する人、設備、取引先、物流、情報を一つのシステムとして捉える経営課題であることを改めて示しています。
今回の地震を自社の問題として捉え、「熊本で起きたことが明日、自社の拠点で起きたらどうするか」。ぜひ、この機会にBCPを点検していただきたいと思います。
※貴社のBCPの取組について無料相談を致します(1回30分)。
事務所あるいは中野までメールにてお問い合わせください。
(弁護士 企業防災ガバナンス・アドバイザー 中野 明安)

